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【D&D】The Shackled City[第3章]05

「よく来てくれました、さあ奥へ――なんてこと」

 寺院前で待ち構えていたジェンヤが、テッドとタリスの背後のマグロ状酔漢2体を見て眉を顰める。浮遊盤に駆け寄り、身じろぎ一つしないレイウルトとアランのアルコール臭とその顔色を確認すると、即座に呪文を二度投射。

「――っ痛うー?!」

 アランが意識を取り戻し、額に両手をあててのたうつ。狭い浮遊盤の上でレイウルトにぶつかると、反対側に転がって、路上に腹から落ちた。

「ナニコレ、なんで俺こんな頭いてえのー?!」

「…二日酔い、ただし身体的不調は全部帳消し、ということか」

 苦虫を噛み潰したような表情の(つまり、いつもとさほど変わらない)レイウルトが、己の頭痛を刺激しないようにとか、ゆっくりと身を起こし、やおら浮遊盤から降りる。

「《毒素中和》の呪文です。この時期は酒量の度が過ぎる市民も多いので。ああ、でも頭痛だけは緩和できませんからそれは我慢してください」

 西の空、色濃い雨雲を見上げ、ぐ、と唇を噛み締めた侍祭ジェンヤは、アランが立ち上がるのに手を貸しながら、鋭く囁いた。

「時間がありません。ですが往来でできるような話ではないのです。さあみなさん、内陣までお入りください」

 そうして、急ぎ寺院の中へと戻るジェンヤは、入り口での説明はそれで十分と考えているらしく、一度も振り返らない。切迫した雰囲気に、4人は一言も発せず後に続いた。

# # # 

 通されたのは、祭壇の奥、司祭席の隣。そこから、司祭や侍祭用の私室へとつながる廊下があり、ジェンヤが押し開けたのは彼女に与えられた私室。

「アランさんたちが到着しました」

 室内には、メイヴが一人、羊皮紙の切れ端を手に、拳を唇に押し当てている。

「あれ、アビーさんとピーターは?」
「お二人はウィー・ジャス神殿へ戻りました。沈黙の聖女の判断を仰ぐとおっしゃていましたね――当然の判断です」

 テッドの疑問に、ジェンヤが即答する。

「一刻の猶予もありません、が、まずこれを読んでもらうのが先でしょう。メイヴさん」

 ジェンヤは、メイヴに声を掛け、左手でアランたちを示す。手にした紙片を仲間たちにも見てもらうように、という仕草だ。

「…読んで」

 いつでも困り顔のメイヴが、ますます困り果てた顔で羊皮紙をテッドに押しつける。テッドはそれを受け取り、アラン・レイウルト・タリスを見渡すと、その中身を読み上げた。

「えー、
 『ラッキーモンキーにいる。8つのワンド確保。
  宿は襲撃された。賊は野蛮な猿人だ。
  致命傷を負った。地下室に退却。
  ここにいるのはバレている。救援乞う!』
 『サーセム、貴方ですか?少しだけ待っていて、
  諦めないでください、すぐに助けを送ります。
  ほかにメッセージがあるならば送ってください、
  ですがそれまでは――』
 …サーセムって誰です?」

「サーセム猊下は、」

 ジェンヤが青い顔で、しかしはっきりと告げた。

「当寺院の最高司祭です」
「つまり、司祭から侍祭に向けられた《送信》の呪文を書き取ったのか。いつ受信した」

 レイウルトが羊皮紙の正体を看破する。ジェンヤが答える。

「もう1時間ほど前になります」
「ラッキーモンキーって、たしか――」

 鍵屋のゲルブが一時的に避難していた、郊外の宿屋の名前ではなかったか。

「はい、コールドロンから西、馬でも半日――7時間はかかるでしょう」
「不味ぃな」

 アランがつぶやく。

「馬は4頭用意しました。そしてここに、金貨で五千あります。これで――」
「――そこまでする、このワンドってなんなんです?」

「8つのワンドは、我が寺院がサッセリンに発注していた、《水位操作》のワンドです」
「えっ」

 コールドロンはボウル状地形、中心は湖、外に出る川は無い。
 冬は雨季。降ればどしゃぶり。
 そして、『洪水』祭に《水位操作》の呪文――

 全員の脳裏で、いやな各種情報がいっぺんに符合し、一つの結論を導き出した。テッドが、恐る恐る手を上げる。

「それは、まさか――」
「はい、このワンドが回収できなければ――コールドロンは、水没します」
「やっぱりー?!」

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Comments

洪水…なんともタイムリーですね。

Posted by: Kurage | October 22, 2011 02:57 AM

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