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【D&D】The Shackled City[第0章]02

「うちのバーテンも、もういなくなって2ヶ月にもなるよ」

 グリフォン・マレック、33歳。人間。失踪3日前には、結婚式の予定を彼女と話し合っている姿を、友人が――

「そういや、あの元冒険者のおねえちゃんもいなくなったそうじゃないか。いったい何が起きているのかねえ」

 コリィスタン・パイク、20~30代。人間。冒険者を辞めた原因は、脚の怪我が元で――

「孤児院で働いていたジェナーだって、半月前にいなくなったそうじゃない?きっとなにか原因があるのよ!」

 孤児院から、3日前にいなくなった4人の子供たち。ディーコン、ルシンダ、イヴリン、テレム。

 ぎりり、とタンカードを握り締めるメイヴの手が、白くなる。だめだ。聞こえてくる話は、どれも、噂話の域を出ない。

「――なにか、変わった話はないの?」
「ああそうだなあ……北の街道を使う商人が、フックフェイスを見たって言ってたそうだぜ。俺の友達から聞いた話だがね」
「フックフェイス?あの、北の山に住む竜のこと?えええ、ほんとう?」

 今聞きたいのは、そんな話ではない。だが、どう話せば判ってもらえるのか。

「グリ公がいなくなったのと、クリスカーがいなくなったのは同じ日なんだっけっかよ」
「らしいじゃない?やっぱり、病気が原因って噂は本当なんじゃない?」

「その話、すげえ興味があるズラ」

 背の低いハーフオークがタンカードを持って斜め向かいに座った。

「消えちまう病気とかって、聞いたことないズラ。病気が原因なら、司祭さまがたの出番で、あんまり心配する必要もないズラ?」
「いやねえ。なんでも7、80年くらい昔、ノームのジャザディなんとかってのが魔法の病気で“ふっ”と消えちゃったらしいよ。今回のも、実は病気がこっそり流行ってる、とかじゃないのかねえ」

 意外に巧みな話題運びで、その背の低いハーフオークはメイヴの知らない情報を酔漢たちから引き出して見せた。 

「フックフェイスって聞いたことないズラ。ゆうめいな竜なんズラか?」
「200年も前から、このコールドロンの北30マイルてぇおっかない距離に巣を構えてやがる、でっけえ赤竜よぉ!」
「婆様の昔話って程度だろうが」
「えー、コールドロンに住んでたんだけれど、人が来たから北に引っ越した竜なんでしょー?」

「竜か!よし、おれが退治してやるぜえ!!」
「アラン!アランてば!!」

 さらに転がり込んできたのは、どう見ても農家のごくつぶし、な風体の、頬を酒精に赤らめた若者と、それを止めに入る利発そうな青年だ。

「竜退治ですね!ひとつ俺に任せてください!おれ、アランって言います!銀の髪のステキなお嬢さん、ぜひお名前を!!!」
「……!」

 今までの会話を知ってか知らずか、若者はメイヴの手を握り、名を問う。――呪われしドラウの血を引く混血児、と罵られ続けた、その手を――んがしかし、アランの目に映っているのは、神秘的な肌の色/しっとりと輝く銀色の髪/憂いを帯びた紅の瞳/であって――ドラウが、如何に蔑まれるべき生き物であるかは、しがない農家の五男坊である彼には知る由もないことであった。

「――ちがう。私が追っているのは、失踪事件のほう。竜退治は、英雄に任せるべき」
「わっかりましたぁ!その失踪事件!この、ア・ラ・ンにお任せくだっさい!!」
「――なにも手がかりはない。依頼人もいない。儲からない。やめるべき」
「判る、判るズラ。いなくなったのはみんな貧乏人ズラ。このままほっておくと、オラとかこの別嬪さんみたいな貧乏人から、コールドロンから消えていっちまうズラ。これは由々しき事態ズラ。オラも及ばずながら手を貸すズラ!!」

 だれもそこまで言っていない、というのに、その背の低いハーフオークは、へらへらと笑いながらメイヴの隣に腰をかけた。

「――あなたは?」
「オラ、グリット!冒険者になりたいズラ!あんたについていけば、きっと本物の冒険者になれるズラ!」
「うお!やっぱりお姉さん冒険者だったんスね!いやったあ、これは幸先がいい!おれ腕っ節には自信あるんスよ!ぜひお供させてください!!」

 盛り上がるアランを余所に、あちゃー、と手のひらで顔を覆っている、アランの連れの青年、テッド。

「失踪事件の原因が魔法なら、オラの友達のレイウルトが黙っていないズラ!」

 調子のいい小柄なハーフオークの指差す先にいた半鉄仮面のドワーフが、ちょっとむせた。

「レイウルトは魔法戦士になりたいズラ!魔法の病気にはきっと興味を持つズラ!おまけに、おっさんの持ってる斧はどえらくデカいズラ!」

――きっとうまいこと盾になるズラ!という本音を口に出さないだけの知恵を、グリットは持ち合わせていた。

「いや、金になるとかならないとかじゃないッスよ!俺、ビッグになりたいッス!ひとつお供させてください!ていうかぜひ!ぜひお名前を!!」

 あっけにとられ、少々逡巡し、やがて、本人だけが気付かない、かすかな笑みを洩らして、都市の孤児、ハーフドラウの儚げな美貌の娘はその名を名乗った。

「――メイヴ」

「やった!名前を聞いた!テッド見たか、いまフラグが立ったぞ!」
「メイヴさんすみません、こいつかなり酔ってる様で」

 青年はテッド。お調子者はアラン。この背の低いハーフオークはグリット。無口なドワーフはレイウルト。メイヴは、一癖どころではない男達の様子を、心のメモに書き付けていった。

……さてここに、ようやく、長い長い冒険を共にする仲間たちはお互いの名を名乗り、冒険者としての証立てをした――のだけれど、シナリオ的には、まだ最初のイベントも始まっていなかったという。

「……まあ、とりあえず今日はうちに泊まりなよアラン」
「え、いいの?すまねえなあー」
「――そろそろ」
「あ、帰るならお送りしますよ!!お送りしますよメイヴさん!!」
「オラもとちゅうまでついていくズラ」

 無言で立ち上がり、同じく『途中まで送ってやろう』という所作のレイウルトに、しかし、だれも気が付くことはなかった。とっぺんぱらりのぷう。

* * *

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Comments

新章はじまってうれしいです。
楽しく読ませてもらいます。

Posted by: 陽樹 | March 22, 2010 06:54 PM

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