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【D&D】『病魔の坑道』再び:3

* * *
――ところで、どんなキャラを作ればいいのかね。
――打撃力。あと梯子とロープと戸板持ってきて。
――マジデ?

「うぉー、きたよ新わーるどー」

 眼鏡、レイピア、長い髪。そして(=ω=.) 。

「やーっぱグレイホークだぁよねえーストームリーチも悪くないけどねぇー」

 娘の名はコナタ。コナタ・ブランディッシュ。先ほどぽこたんインしたお!な新キャラである。クラスはローグ。《フェイント強化》からの《恐るべき守り手》+《急所攻撃》で、大抵の敵は屠れるという刺突娘だ。眼鏡は捜索能力を高める魔法の眼鏡、そして手持ちの盗賊道具はどれも高性能、さらに長柄もつけて安全性も確保。なんという厨。

「コラっちどこかなあ。しかし……なんにつかうのかね、コレ?」

 コナタは、頼まれて購入してきた品を見て首をかしげた。10フィートはある梯子と、先んじて結び目だらけの絹のロープ。さらにフック。

「どっか忍び込むのかな? 『梯子は真ん中で斬って10フィートの棒が二本ですよ、うっう~!』かな? まさかぁ――まあうん、どうでもいいや(=ω=.)」

 彼女もまた、『病魔の坑道』を封鎖した冒険者の一人であった。さっきそう決まったから、これは歴史的事実となった。したがって、彼女はドンガス・コーラー・バルクの友人なのである。

「ちぇっ、いないなあ。しかたないshoutすっかー(=Δ=.)」

 ドンガスへのwisコマンドが通らなかった理由を、彼女はまだ知らない。

* * * * *

* * * * *
――クレリックとウィザード、どっちが必要ですか。
――殴っても死なないほう。
――マジデ?

「あのー」

「はい、なんですか?……ああ、昨日のハイローニアスの助祭さん」
「押忍、ありがとうございました。おかげで無事仲間と合流できたッス。で、そのう――ひとつお聞きしたいことが」
「なんでしょう?」

 頬に人差し指を当て、小首をかしげるエルフの司祭。ハイローニアスの助祭であるところの青年は、がしがしと頭を掻いて、いいにくそうにしながら、ややあって本題を切り出した。

「そのう――ぶっちゃけ、3レベル呪文のお勧めってなんスかねえ」

 自分、本気でクレリックしようとか初めて思ったッスよ、正直。――殴れて固くて治癒のワンド振れて、で選んだ戦闘司祭の道なんで、呪文選択、苦手なんス――3人でダンジョンアタックとか、かなり無茶だとは思うんスが――

「自分にできる最大限の努力をしてみようかな、って」

 それはいいことですね、とエルフの司祭は微笑んだ。

「お勧めですかー。そうですねえ、うーん……わたしがあなたくらいの時は……《ディスペル》か《リムーブ・ディジーズ》は必ず選択肢に入ってましたねぇ」

 あと《レジストエナジー》とか。もっとも、敵が龍だとわかっていたからですが、と事も無げに言いながら指を折る。

「2レベルの話になりますが、《マス・コンヴィクション》もいいですね」
「セーヴ、そんなに大事ッスか?」
「あはは。……ものすごく大事ですよ」

 と真顔の司祭。

「ここぞと言うところで要求されるのは頑健さ反応速度ですからね、神経を心持ち尖らせてくれる《コンヴィクション》は予防策としてかなりお得感と安心感がありますよー。そうそう、敵は何者なんですか?」

「熊、と聞きました」

「熊」

 エルフの司祭は眉を顰め、小指を額に当て、うーんと唸ると、

「――なら《カーム・エモーション》をお勧めします。万一、倒しきれなくとも戦闘を終わらせることができるかも」
「そんな、熊ごときで」

「相手は野生生物ですからー」

 獣は気が立っていなければ戦闘そのものを避けられますし、と、森の女神の司祭らしいことを言うエルフ。

「それに、この辺の生き物はみんな尋常でなくタフですよ」
「は?」
「HPがMAXなんです。あなたがいままで戦ってきた敵より、倍頑丈だ、と思ってください」

 まっくす?と目を丸くする助祭に、司祭は構わず助言を続ける。

「それと《クローズ・ウーンズ》。戦友を失いたくないなら、是非。遠隔化された治癒呪文、かつ咄嗟のときに使えるというのはかなり心強いですよ」

「……なんかすげぇカツい呪文ばっかのような気がするんスけど」

 臆病に過ぎやしないか、と助祭は思った。しかし、エルフの司祭は梢に近づく幼子の木登りを見守る表情で、こう答えた。

「ああ――この界隈を歩くのは初めてなんですね? ……うん、そのうち判ります。これがこの辺の『ふつう』だってこと」

 その透明な表情に、助祭は慄然とした。もしや、自分はとんでもなく危険な場所に赴こうとしているのでは? その考えを、ハイローニアスの教えが『惰弱』と罵った瞬間、彼自身も頭を振ってその寒気を振り払った。

「ええと、《カーム》と《ディスペル》と《クローズ・ウーンズ》……よし、判りました。助言ありがとうございましたっ」

「はい、気をつけて。ところで、馬とか乗らないんですか?ランスで突撃とか」

 聖堂騎士っぽいですよ?と司祭。助祭は笑って、

「ああ、俺“戦”の領域取らなかったんでー。ランスとか持てないっスよ」
「へー、じゃあその腰のロングソード+1はなんですか?」

――ああ、やべえ!危うく-4で長剣振り回すところだった!やべえ!リアのこと笑えねえ!!
――ナンダヨー、-4で振り回そうヨー
――巻き戻し!巻き戻し!
――ま、キャラ作成中の与太ですし、いいですよ。

「ごほん。ああ、俺“戦”の領域取らなかったんでー。俺は“宿命”を見極めるためにハイローニアスに仕えたんス」
 ロングソードなんて買ってマセンヨ?と呟くと、PLは武装をメイスに書き換えた。

「なるほど、では――あなたと御友達とに善と正義の加護がありますように」

「押忍!俺もきっと《relations》で仲間を助けて見せます!」
「も、もしもし?《イレイション》は確かにいい呪文ですが、発音が違いませんか?」
「俺にとっちゃあの呪文は《relations》なんス!押忍、行ってきまス!」

 あ、とも、う、とも、むぐ、とも聞こえる声を出したきり絶句したエルフ司祭は、僅かな逡巡の後、ほふ、と溜息をついて去り行く青年の背に祝福を――普通に、祝福を投げた。
 『きっと帰ってきてくださいね』でも『もう帰ってこないでください!』でも、なんだか彼の死にフラグになってしまいそうだったから、である。

「ご武運を――猛き電光・ハイローニアスが助祭、クロウ殿」

* * *
 つづく
* * *

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