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【D&D】壮麗なる都ウォーターディープ:3

 ウォーターディープの下水道はとても発達しているので、どの放水路にもかならず通路がついている。あたしたちは、件のネズミ騒ぎの原因を探るべく、下流排水溝から噴水下目掛けて歩き出した。

「臭いね」
「そりゃ臭かろうて……それにしても」

 ドワーフのデルヴァルがアヴェルとあたしをちらりと見て溜息をついた。

「わしらのパーティのおなご共はもうちっと慎みってものを大事にしても良いんじゃないかねえ」

 あら心外。


「私はきちんとした格好のつもりだけれど?髪も結った、脚だって出してない……胸は革のホルターがいれてあるからいつもよりおっきく見えるかも」
「……」
 アヴェルがマントで、す、と胸元を隠した。ふ、勝ったな。谷間を見せればいいってもんじゃないのだ。

「ええい、アヴェル!マントを絡げれば脚が見えるぞい、脚が!」

 赤くなるドワーフの目の高さで、アヴェルの太腿がマントの裾からちらちらする。デルヴァルにはヒゲがない上、けっこうな童顔なので、まるで背の低い少年を我知らず挑発する無防備な隣のおねえさん、という風情である。

 まあその場合、少年は斧を携えてはおらず、おねえさんはハーフドラウじゃないし、そもそも場所は下水道じゃないわね。
 
 うーんやっぱり露出を増やす方法を考えたほうが良いかしら、でも胸元ばっかり見られて話を聞いてもらえなくちゃ本末転倒だしなあ、とか考えながら、あたしは松明を高くかざしてみた。

* * *

* * *
「大丈夫か」
 ジェイジェイの問い掛けに、アヴェルは黙ってマントを引き、太腿の引っかき傷を隠した。ええい、し様のない子。

「調子が悪くなったら言うのよ」
「……平気」

 軽く肯くと、これが自分の仕事とばかりにもう一度闇の奥へと先行する。

「ダイアラットは病気を持っていることが多いからのう。心配じゃ」
「やせ我慢はするが無理はしないやつだ。大丈夫だろう」
「なんていうか、遠慮があるのよね」
「生い立ちあたりに関係があるのかもしれん。ならば詮索はすまい」

 ハーフドラウ。人とドラウの混血。

「血筋の話だけでもいろいろ事情がありそうだものねえ」

「しっ。アヴェルから《メッセージ》だ。……ウジの大群がいるそうだぞ」
「げぇー」

 アヴェルは、盗賊であると同時に魔法使いでもある。その技は主に、先行偵察の情報を即座に後方に伝達する占術に偏っている。だから彼女は、後退する際のリスクを負うことなく偵察の任務をこなせる、優秀な斥候なのだ。

* * *

* * *
「大丈夫?」
 ゾンビの掴みかかりで、アヴェルの革鎧の胸元を留めていた革紐は、無残にちぎれてしまっていた。そのままじゃ胸当ては前にはだけちゃうので、アヴェルは両腕で胸を隠すようにしてかがんでいた。

 でもその押さえ方だと、余計におっぱいを強調するのよね。この子、わざとなのかしら天然なのかしら。

「……紐」
「ええと、革紐はないわ」
「……リボン」

 細い指で、私の髪を指差すアヴェル。私は、髪に編みこんでいた赤いリボンを抜き取ると、くるくると指に巻き取ってからアヴェルに握らせた。

 しゅ、しゅ、と手際よく革鎧の穴にリボンを通すアヴェル。

「……できた」

 暗い肌の豊かな二つのふくらみの上、深い谷間を渡るつり橋のように、目に鮮やかな赤いリボンが蝶結び。これ、『どうぞほどいてください』って書いてあるみたいなもんよねえ。

「うーん、リボン……そうかー、こういう視覚効果が……」
「……?」

「わしらのパーティのおなご共はもうちっと慎みってものを大事にしても良いんじゃないかねえ」

 デルヴァルが溜息をつき、ジェイジェイが忍び笑いを漏らした。

* * *
(続く)

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