« 【D&D】05:迎撃 | Main | 【D&D】07:撤退 »

【D&D】06:復讐

* * *
 3階。階段のある部屋から廊下は左へ伸び、先で右に分かれています。

「てんじょ高くて廊下も広い。コンボイが詰まらないのがありがたいよ、さすがお城」
「止まれっ」


 バッシュが進もうとするコンボイの腕に手を掛けました。不思議そうに見下ろすクロエとコンボイ。

「どしたの?あんちゃん」
「……その角、目を凝らしてよっく見るんだ」

 全員、黙って目を細め……

「なんか……陽炎のような」
「水の壁のような」
「うむ、ゼラチナス・キューブ。バッシュ、よく気づいてくれた」
『またぬるぬるぅー?』
「廊下にみっちり詰まってるじゃないですか。うわ、進んできた!」


「さばけ、コンボイ!!」

 コンボイが八相の構えから、ゆうるりと右の手首と腕を返しながらゼラチナス・キューブの表面を『弾く』と、粘体の前進力は空転し表面がびりびりと波立ちます。熟練の武僧の技は粘体にも効果があるのですか?!


「《足止め》便利だなー」
「巨体と透明な体組織を生かして相手を飲み込む、のがこやつらの生き方だ。移動を妨げられた以上、もうこれに打つ手はない」

「……じゃ遠慮なく」


 ゼラチナス・キューブの始末は、簡単だった、の、ですが。


* * *
『カカカ、所詮そのゼラチナス・キューブは只の囮』
『本命は偉大なるズウウマーヴさまだ』
『我等はその露払い』
『行くぞ!!』


「《力場の壁ウォール・オヴ・フォース》」

 《転移(テレポート)》で私たちの後ろを取り、襲い掛かってきた2匹のヴロック。しかし、長の口上の間に《次元移動阻害(ディメンジョナル・アンカー)》を極められ、《転移(テレポート)》を封じられたところで《力場の壁ウォール・オヴ・フォース》が分断。

「順番に始末してやっから、そこで見てろ」
『きょ、兄弟!!』
「コンボーイ!!!」


 《力場の壁ウォール・オヴ・フォース》の手前で、調理前の鶏よろしく引き毟られ、あっというまに絶命するヴロック。

『それ以上好きにはさせん』


 ゼラチナス・キューブのいた角に、やはり《転移(テレポート)》で現れたのは、


『ズウウマーヴさま!奈落でただ一人の、もっとも巨大なヴロックであられる方!!』
「きゃらの!“世界で一人だけの大ヴロック”なお前を今後“SMAP”と呼称する!!」


「つか、番人なら番人らしくナントカの間で待ってろよ!!」
『主にあてがわれた部屋が狭いのだ』


 言うなり、嵐のような全力攻撃を正面のバッシュに叩きつける大ヴロック。宙に浮き、それでも踏みとどまるバッシュ。しかし、もう膝が落ちてしまいそう……!


「《不屈の誓い(ストールワート・パクト)》が発動している……バッシュ、下がって!」
「だいじょぶ!ドルイドにもこの呪文がある!《大治癒(ヒール)》!!!」


 コンボイの背中から、クロエがバッシュの背を張ると、バッシュの全身に再び活力が漲りました。

「ありがとな、クロエ」
『わ、我が全力が一瞬でムダに?!』


「ふむ、足を止めたな。ではこれをやろう――《気力減衰(エナヴェイション)》」


 手の中で、黒い光を組み上げ、それを指先から一筋の矢にして放つサンダース。
 黒光は、大ヴロックに突き立つと、その生命力と相殺するように細かな金色の塵となって周囲に飛び散ります。いえ、あれは生命力をその傷口から噴き出させているのですか?!


「存外に効いたか。ではもうひとつ――《即行・気力減衰(サドン・エナヴェイション)》」


 黒の光がもう一筋、皮袋に突き立てた葦の茎のように、大ヴロックの中身――生命力を無為に辺りへと放散させてゆきます。大きさは変わらないのに、まるで一回りしぼんでしまったかのように弱弱しく見える大ヴロック。


『お、おのれ!!』
「おまけだ。《気力減衰(エナヴェイション)》」

 容赦なく連射された三本目の黒い光の矢が、残る最後の気力さえも大ヴロックから奪ってしまったかのようです。


『く、き、貴様っ……』
『ズウウマーヴさま!援軍を求めましょう!!』
『蛇女などに弱みを見せられるか愚か者!』


「あー、あんだけ弱ってると……効くかもしれん」

 ジョンが大ヴロックの足元に、ベーコンの欠片を投げ込みました。

「《(グリース)》!!」
『ころべー!!』


 果たして、大ヴロックはバランスを崩し、その場で無様にも横倒しに転んでしまったのです。

「きゃらの!新呪文ご披露!!《人熊の顎(バイト・オヴ・ワーベア)》!!!」

 熊ー。


「おい、熊の鳴き声は『熊ー』でいいのか?」
『コンボイがそういってるんだから……そうなんじゃないの?』


――ふたりともー、《言語会話タンズ》でほんとうにそう言っているだけですよー、熊の鳴き声は『熊ー』じゃないですよー、騙されてますよー。


 さて、コンボイの四本の腕が、顎が、猿のそれではなく羆のそれに。そして羆の筋力で繰り出される、コンボイの全力爪爪爪爪噛む攻撃。


 哀れ大ヴロックは、絶命の叫びを上げることすらできませんでした。

『ズウウマーヴさま!』
「お前の相手はこっち。《力場の壁ウォール・オヴ・フォース》は解除して《幻の軍勢ファントム・バトル》」


“ホアッ!ホアッ!ホアアアアアーッ!!!”

 階下から駆け上がってきた、密集陣の重歩兵数十人が、瞬く間に生き残ったヴロックを取り囲みます。

『な、なに!?援軍だと?!』


 いいえ、それは幻です。あなたの死神は、

「……!!」

 その幻に潜む、竜殺しのバッシュです。……バッシュの連撃が、最後のヴロックを仕留めました。


「……仇はとったぞ、門番さん」


 そのとき。

『あらあ、死んじゃってる』

 廊下の角から、声がしました。

* * *

|

« 【D&D】05:迎撃 | Main | 【D&D】07:撤退 »

Comments

The comments to this entry are closed.