« 【D&D】『赤い手は滅びのしるし』67(了) 54日目~ エルシアの谷で | Main | 【D&D】01:スティリッチ侯国にて »

【D&D】『赤い手は滅びのしるし』補足

* * *

――以上が、ブリンドル市公文書館に収蔵されている『ティアマト戦史』の、「アローナ司祭アルウェン・エリアロロの日記」として知られる箇所の抜粋である。『ティアマト戦史』は“赤い手の群/軍”を興したティアマト司祭アザール・クルの単一目的による一連の戦役を時系列順に記したものであり、当初エルシア谷の都市軍がその奇襲に抗し得なかったことから、2ヶ月にわたる戦役の、特に前半については詳細が明らかでない(進軍状況/戦闘の事実/損害状況)。


 『赤い手の戦役』とも呼ばれる『ゴブリノイドの大群によるエルシア谷の侵略』(昔話として伝えられるところに従うならば『赤い手は滅びのしるし』――以下そう記す)は、共通暦592年の出来事である。


 大群は明らかに統制の取れた軍隊であり、ここに将帥アザール・クルの卓越したカリスマが見て取れる。だが、彼の生涯は「芸術をよく好んだ」「愛人がいた」「サイズは大型だった」「竜の子(ハーフドラゴン)であった」「ブレスを吹いた」等の流説があるが、そのほとんどは謎に包まれている。また、戦後死体が発見されなかったことから、一部のゴブリノイドには「アザール・クルは死んでおらず、いつかエルシアに帰還して虐げられたゴブリノイドを解放する」という説がささやかれている(が、公式には否定されている)。


* * *

 この「日記」の信憑性については、一部に不整合がある点を捉え、偽書であるとの説がある。確かに、魔法の適性にそぐわない使用方法を登場人物が行っている、と見られる描写があり(《透明化看破》の贈与等)、これが偽書説派の論の根拠のひとつとなっている。

 だが、すでに当時、この戦役の立役者として風変わりな冒険者の一団がいた、という事実は人口に膾炙しており、エルシア全域の史書にその痕跡を見ることができる。したがって、“アローナ急行”という一団がこの戦役で何らかの役目を果たした、という点だけは、派の左右を問わず意見の一致するところである。


 また、最新の研究によると、別プレーンでも同じような戦役が発生している例が散見され、近年、この『赤い手は滅びのしるし』事件もまた多数のプレーンで発生していることが確認された(後述)。異なる次元においては、その発生や経緯はほぼ同じながら、風変わりな冒険者の一団についてはさまざまな相違があり、これがそれらプレーンにおいてどのような意味を持つのかは、今後の次元学の研究と発展を待たなければならない。

 しかし、これら風変わりな冒険者の一団の違いが、すなわち次元の特徴をそのまま現すのだという強硬な意見は、さすがに早計に過ぎると思われる。


* * *

 別プレーンとの比較によって明らかになった、当次元界(別次元の読者のために付記すると、これはkey-shopCCBプレーンで著述された文章である)の特性は以下のとおり。


1.冒険者の道程は明らかに過酷である
 冒険者に対する不意の遭遇――すなわちワンダリングエンカウントの確率は、1時間に1回と頻発する傾向にある。別プレーンでは、傾向の大小はあるものの、不意の遭遇はおおよそ8時間に1回あるかないかであり(一部のプレーンにおいては『ランダムエンカウント?なにそれおいしい?』との回答を得た)、これが当次元界に冒険者が少ない理由のひとつであると考えられる。――冒険者は、次の町まで無事に旅することもできないのだ。


2.冒険者の遭遇する脅威は、群を抜いて危険なものである
 通常、遭遇し発見される魔獣・異形その他の生物、所謂クリーチャーは、自然界の法則にしたがってさまざまな違いを持つ。――顕著な違いとしては、その士気、すなわちヒットポイントと称される、戦闘続行可能な能力の大小に現れる。
 ところが、当次元界で冒険者が遭遇する怪物は違う――各種のクリーチャーは、その種族が許容する最大限のヒットポイントを持って冒険者に対峙するのである(所謂ヒットポイントMAXルール)。当次元界のクリーチャーのタフさは、ほかの次元界の比ではない。おおむね、2倍の戦闘継続能力を持っている、と推察される。
 ただし、これは冒険者が遭遇する敵性生物に限られ――これもまた当次元界に冒険者が少ない理由のひとつであろう。


3.冒険者の得るところは、あまり多くない
 三つ目は、これから冒険者になろうという諸君には残念なお知らせとなる。当次元界では、冒険者が得られる財宝は別プレーンのおおよそ半分である、という統計が出た。これは次の理由による。
 A.アイテムによって強化をする種が少ない
 2.で説明したとおり、当次元界の種はヒットポイントにおいて他所の倍の数値を持つ。したがって、その能力を魔法の物品で強化する必要がないのである。――これは、冒険者が怪物を退治しても、得られるものがない、または少ない、という事と同義である。
 B.望みのアイテムは、そうそう得られるものではない
 当次元界では、『神の見えざる手』は働かない。誰もが欲しがる物品であっても、それを所有するものは極端に少ない(前述A)。薄幸な冒険者たちは、ランダムに決定されているとしか考えられない財宝を、必死でかき集め――必要のない物品については、これを半値で売却するしかないのである。そして、高位の冒険者になればなるほど――必要な物品は先鋭化され、それらが怪物の所持品として懐に転がり込む、などという幸運は、針の穴ほどの望みしかない。
 さらに、入手できる金貨が少ないのであるから――望みの物品の購入・作成などとなれば、これはその針の穴に駱駝を通そうとするに等しい。


 当次元界で運命の審判(ダンジョンマスター)に『クソマスター!』や『このコーデル!』などの(親愛の情が籠った)感嘆詞が使われる理由は、このような事情による。
(~後段省略)

* * *


他プレーンの『赤い手は滅びのしるし』資料


『TRPGのうみ』 非グレイホーク世界でも『赤い手』は存在しうるという貴重な資料。ただし冒険者は全滅の模様。
にゃーまーにゃら~猫人族行状記~ グレイホーク。4章後半で全滅。
TRPG置き場 「日記」形式の戦史。更新停止か。
Redhand DDMを多用し視覚的効果に富む。11日目で更新停止か。
トリデノトビラ 竜魔将が強化されるとすれば、どのような手順が妥当か?という思考実験。途中。
Harry Blog Harry、という匿名人物の手記。途中。
遊び人長屋 戦況を立体視覚的に表現するテレインが圧巻。DDMを使用し、個人戦闘を模擬するものなら必見。完結。

|

« 【D&D】『赤い手は滅びのしるし』67(了) 54日目~ エルシアの谷で | Main | 【D&D】01:スティリッチ侯国にて »

Comments

The comments to this entry are closed.