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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』50・49日 大通り

* * *
「全員、バリケードの後ろに下がって!」
「連中の始末は俺たちがする!みんなは弓で援護を頼む!」

 西門から上る、西の大路。馬車がすれ違えるほど広いこの道は、今日、死守せねばならない防衛線となりました。バリケードの影には、ここの防衛に踏みとどまった弓兵が10人と、黄金の獅子騎士が1人。
「君は彼らの指揮を頼む」
「わ、わかりました!ディー先生!ところであの、道端に横たえてきたあそこの鶏はなんなのでしょうか?」
「あれは万一の保険さ」
「ほ、保険?」

 《トランスポジション》の布石だなんて言って、騎士の彼にわかるはずもないですが、まるで魔法使いなジョンの言い振りに、横で聞いていた私はくすりと笑ってしまいました。

* * *
「うむ、バリケードが引けるのはこの隘路だけか」
「最悪、ここにひっかかった連中を倒しに駆け戻らないといけないな」

 サンダースとバッシュが、門の瓦礫を踏み越えてくるホブゴブリンどもを見下ろしながら言いました。赤い手の軍勢は、予想を超えた統制を見せ、てんでに突撃を図ってきたりはしません。

「こっちに来る連中の戦術目的は『ここの突破』だろな。逆を言えば、それを一定時間阻止すれば連中はここを諦める」
「そうなんですか、ジョン?」
「いやもう、俺の予想だけどな」

 門を越えてくる敵数、ざっと500。

「あれを全部、ですか」
「あれの半分は、さ」

 ……それでも、私たちはここを逃げるわけには行かないのです。この攻防戦で、きっともっとも長くなるだろう戦いが始まりました。

* * *
「敵先陣、歩兵8、オーガ2!右にマンティコア1、左にも1!」
「右のマンティコアはコンボイが行く!弓兵!左に集中砲火!」

「さあ、はじまったぞ」
「うむ、ギリギリまでひきつけるとしよう」

「分かりました。せめて彼らの進軍には、苦労をしてもらいましょう。《ウォール・オブ・ソーンズ》!」

 アローナの奇跡によって、高さ10フィート、厚さは20フィートにも及ぶイバラの壁が大路を塞ぎます。その中には、

「アルウェン?ホブゴブリンは?」
「あのイバラの壁の中です。気をつけて!あの壁は通るものを傷つけますが、通過を全く阻害するわけではないんです!」

 ナイフほどもある鋭い棘に全身を掻き毟られ、悲鳴を上げるホブゴブリンたち。可哀想ですが、動かなければそれ以上怪我をすることもありません。

「……アルウェン司祭、この呪文を今までにつかったことは?」
 瞬く間にゴブリンの血で赤く色づくイバラの棘を、呆れたように見ながら、サンダースが問うてきました。

「ほらえっと、棺桶屋で。黒装束は脱出したじゃないですか」

「……この壁を掻き分けて進むには、巨人でもかなりの力で身体を押し込む必要がありますよ司祭、<呪文学>的な見地では」
「黒装束は窓のそばだったからなあ」

「アルウェン司祭、《ウォール》系の呪文の真価とは、移動を阻害することにあるんですよ。このイバラの壁を越えるには」
「飛び越えるか、迂回するか、ドルイドの仲間になるか!きゃらの!マンティコア始末してきたぞ!」
「おう、お疲れ。……つまりどういうことだサンダース」
とバッシュ。

「この大路は完全に封鎖された、ってことと」

 サンダースが剣を突きつけて言い放ちました。

「先陣で残ってるのはお前だけってことだ、そこのマンティコア!」

* * *
 先陣の後ろについてきていた伝令らしいゴブリンが、イバラの壁に仰天して後衛に駆け戻っていくのを、クロエが屋根の上から(マンティコアをバラバラにしているときに)見たそうです。

「したがってー、彼らは『ここの突破』は不可能と理解したようだ!諸君、お疲れ!イバラの壁はあとたっぷり1時間半は持つ!その間、大路両脇の建物の屋根の上や2階の窓から、ここを突破しようとするバカどもを弓で狙い撃ちしてくれ!」

 おおー!と守備兵たちが拳を挙げました。当初の予定より随分と楽な防衛戦になったはずです。

「しかし」
「ああ」
「ちょっとやる気が空回り!アルウェン、なんとかしる!!」

「わ、わたしに言われてもー……」

 戦わなくてすんだんだからよかったじゃないですか。ねえ?

――そこへ、ジャルマース卿からの精神感応通信が飛び込んできました。

『至急、ペイロア寺院前広場まで撤退せよ』

「えええっ?!」

* * *

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