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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』63・54日目 邪竜の神殿(6)

* * *

「入っていらして」

「わたくし達を楽しませて」


 ふふふっ、くすくすという二つの笑い声。ドアを開ければ、そこは、


「なんだ、この部屋……」

 分厚いじゅうたん。甘いがどこか毒々しい――おそらくは麻薬の香り。迫力満点の豪華なタペストリーは主題が2つ、右が『勝利するティアマト』、左が『滅ぼされるプラチナドラゴン』。精緻な彫刻と宝石があしらわれた、五つ首の竜を模した大きな水ギセル……竜の首がパイプ。そこらじゅうにころがったふかふかのクッション。部屋を妖しく照らすいくつもの蜜蝋燭。天蓋つきの大きなベッドと、


 そこへしどけなく身を投げ出し、なまめかしい肢をぱたぱたさせながら、ひじをついて爪を磨いている赤毛の妖婦と、


 水ギセルにもたれかかり、細くしなやかな指で退屈気に吸い口をいらっている黒髪の毒婦。


 身につけた衣装はそれぞれ赤と緑の、最低限隠すところは隠している……かしら?というとても扇情的な薄衣。何より目を引くのは、背中に生えた大きな白い翼。


 自分の美しさをよく知った上で見せる姿態、媚びるような誘うような猥らな目線。……ええと、よく似た女を最近見ましたよね。顔つきとかではなく雰囲気が。


「エリニュスか。地獄の淫売だ、気をつけろ」
「そうだ、気をつけろよバッシュ」
「きゃらの!スーをおねえちゃんの足元に飛ばそうとしてたジョンが自分を棚に上げた!!」


「ここのところクルさまがおいでにならずに退屈してたの。さあ、楽しませてちょうだい」


 背負っていた剣を抜き放つ黒髪のエリニュス。その目は嗜虐の欲望に輝いています。


 ちゅちゅ、と唇を鳴らしながら、傍らの剣を手にベッドから立ち上がる赤毛のエリニュス。長い髪をかきあげて剣先をバッシュへと向け余裕の態度。


「そうはさ・せ・る・かー!!」

 部屋に飛び込むや小さな蝙蝠に姿を変え、部屋の天井に陣取るクロエ。


「てやんでーエロおっぱいども、バッシュのあんちゃんに変な呪文かけてみろ?たちまちディスるぜー!!」


 得意の魅了術を打ち砕く、と出会いがしらに宣言されて、二人のエリニュスは一瞬戸惑った風でした。


 まあその一瞬が命取りだったんですけど。


「《駆けろ駆けろ勇壮なる牡鹿よ、速きをアレネストラは歓び、強きをアレネストラは寿ぐ。其れ汝が森の敵を討つ善なる剣なれば也》」
 《朗唱(リサイテイション)》がアローナ急行のやる気を高めます。


「《燃え盛る激怒(バーニング・レイジ)》!!」

 ジョンの支援呪文で炎に――文字通り炎に包まれるバッシュ。突きを織り交ぜて切りかかる赤毛、しかし、鎧すら着ていない悪魔に今日のバッシュの猛連撃を耐えられるはずもなく。


「ル、ルチアっ?!?!」

 仲間の死を目の当たりにした黒髪が、悲鳴を上げます。


「お前ら、名前あったのか」

『あったのか!!』

「うむ、ところでエリニュスよ、電撃はお好みかね」


 錬金電撃カプセルを鎬に叩きつけ、剣に紫電を纏わせたサンダースが、返事を期待していない質問を投げかけます。……もちろん、即斬りつけるので、効果のある無しは聞くまでもないわけで。


「きゃ、きゃああああっ?!クルさま!助けてアザール・クルさまっ!!」


 手ひどく傷つけられたエリニュスの足元からちりちりと魔力の光が。あ、《転移(テレポート)》?


「そいつを《呪払(ディスペル)》!!」

 天井の蝙蝠クロエがちいさい皮翼をぱたぱたと振りながら、無色の魔力を放ちます。したがって、


 きゅっと目をつぶって《転移(テレポート)》酔いに耐えようとしたエリニュスが、救い手アザール・クルの姿を確信しつつ目を開けば、そこに立っていたのは、


 戦鶴嘴(ウォーピック)と、偃月刀(ファルシオン)と、斧盾(バックラーアックス)とを高々と構え、轟々と燃え上がる四本腕の英雄と、

 生命の尽くを飲み干す魔力(《ヴァンピリック・タッチ》)を注入された剣を構える“夕闇の刃”。


「……え、えへ、えへへ。……ゆるして?」


「「『ゆるさん!』」」


 ぎゃー。


* * *

 ベッドの下からは、宝箱の鍵が出てきました。


* * *

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