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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』60・53日目 邪竜の神殿(3)

* * *

「はいはい《位置交換(トランスポジション)》」

『にんじゃのまえとかありえなーい!だんここうぎ!!』


 スーと倒れたバッシュが入れ替わり、アローナの与えたもうた《大治癒(ヒール)》がバッシュの傷の全てを癒しました。


「大丈夫ですか?」

「な、なんとか」


 バッシュが頭を振りながら立ち上がり、戦鶴嘴(ウォーピック)を抜きます。

「アルウェンどけー!そこが邪魔ーっ!!」


 コンボイが殺到し、しかし立ち位置を確保するため私を避けて、壁と天井を使ってドアの手前の角にぶら下がります。


「す、すみませんっっ」


 一方サンダースは無駄口ひとつなく私の前に立ち、ニンジャの一人と切り結んでいます。


「あ、でもここ悪くないかも。コンボイ!探れ!!」


 コンボイが、太い腕(の2本)を伸ばして、扉の向こうをごそごそと漁りはじめました。


「なにがでるかな、何が出るかな♪」


 ややあって、コンボイの腕が(今は)透明な黒装束を捕まえて、細い通路から手前へと引きずり出しました。左手(上)で上半身を腕ごと、右手(下)で頭と思しき部位をがっちりと握り締めています。


「採ったどー!!!よしコンボイ、絞れ!!」


 ああ、ええとアレです。ちょっと悲惨な状況なのであまり詳しく書きたくはありません。抵抗するために姿を現さざるを得なかった黒装束ですが、コンボイはそのまま、堅いビンのふたを力いっぱい開ける要領で……


「ああ、堅い!開かないなあ!バッシュ!ちょっとここんとこ叩いて!!」


 堅すぎるビンのふたをちょっと叩くような恐ろしい気軽さで、黒装束をバッシュの目の前に差し出すクロエ。黒装束はといえば、全身を大猿の手で動けないように握り絞られており。バッシュは躊躇いもなく戦鶴嘴(ウォーピック)を振り上げ、そして、鈍い殴打音が何度も、狭い廊下に響きます。


「さんきゅー!よしコンボイ、もっと絞れ!」


 固いものが折れて砕けるくぐもった音、湿った布を引き絞るような音、大量の液体が雨のように床に落ちる音、……なにかが千切れる音がしました。何が起きたかは、その、察してください。


* * *

 切り結んでいたもう一体のニンジャも、後ろから支援していた戦司祭も倒され、逆方向から回り込んできた別働のニンジャ2体も、コンボイの足止めで突撃は敵わず。復調したバッシュとサンダースの猛撃に、あえなく倒されました。


「おし、始末。で、どうする?」


「短い廊下だし、その先は入り口の部屋と繋がってるみたいだし。ちょっとだけのぞいてみようよ」


 クロエが言います。ああ、あなたは本当に興味津々/好奇心いっぱいの仔猫っぽいですねえ。


* * *

 その部屋は、血の匂いで充満していました。下級兵士用と思われる広い広い雑魚寝/食事部屋。中は、生活の気配こそあれ、生物の気配はありません。それよりも。

 滴り続ける液体の音。腐臭。飛び交う蠅の群れ。そして腐ったとは言え、鮮烈極まりない血の匂い。……血液特有の、錆びた鉄の匂い。


「これは……これはいったいなんだ?」


 大きな部屋の天井に、さしわたし50フィートはあろうかという青銅色の竜の死体が、鎖でもって標本のようにぶら下げられています。

 腹は裂かれ眼は抉られ、鱗はところどころ剥がされ、そして全身には無数の刀傷が。


「勇者の竜、青銅竜(ブロンズ・ドラゴン)。こんな善いものを殺してまで、奴らは地獄が欲しいというのか」

「やつらの潤沢な財政の一端は、こうやって作られたものかもなあ」


 さらりと書いた神殿の見取り図からは、奥があると見込まれるもうひとつの扉。私たちは青銅竜(ブロンズ・ドラゴン)への黙祷もそこそこに、その扉を開きました。


* * *

 結論だけを端的に。その部屋は牢屋と拷問部屋を一緒にしたものでした。その拷問を一手に引き受けていると思しき骨の悪魔と一戦交えましたが、危うしと見た悪魔が転移で逃げ出し、決着には至りませんでした。


「きゃらの!なんという匠の心遣い!ちらかりやすい拷問道具が鎖でぶら下げられて、いつでもどこでも使い放題!使わないときは天井からぶら下がるアクセサリーとして、囚人たちの心を荒ませることでしょう!!!」

「本当に悪魔って奴は、生物を痛めつけることにかけては芸術的な才能を発揮するよな」

「じゃあこっちはほっといて奥へ進もう!」


* * *

 正面突き当たり。両開きの扉の向こう側。そこには、巨大な礼拝堂と一段高い祭壇、そして5つの巨大なアルコーヴがありました。そのひとつひとつに、獰猛な眼でこちらを見下ろす大きなワイバーンが。


「きゃらの!戦闘機格納庫!!」


 広い空間で縦横無尽に戦えそうな気配に、クロエのやる気もフル回復です。


「ちと慎重にいくか」

「おう」


 『飛行薬』を取り出して飲む二人。対照的に、《風の王者(マスター・エア)》で左手のワイバーンへ挑みかかるコンボイとクロエ。


「マジーンゴー!!ってああっ?!飛竜(ワイバーン)の後ろにニンジャがいるよっ!!!」

「何っ!?」


 突進するワイバーン、殺到するニンジャ。うち一人がバッシュもサンダースもすり抜け出て、ジョンと私の目の前に!!


『勝機!親方様!!』


 正面にいたひと際禍々しい気を放つニンジャが、一気呵成に宙を駆け下りてきます!目標は、……ジョンの背後!!


『だめえ!!』


 スーがマスターニンジャの足元に滑り込みました。空中でありながら、気息が乱れてバッシュとサンダースの前に立ち止まってしまうマスターニンジャ。


「はい捕まえたー」


 4本の腕でがっちりとマスターニンジャを捕まえるコンボイ。そして、


「《蛇のごとき迅速(スネークス・スウィフトネス)》!!コマンドワードは“どいてお兄ちゃん、そいつ殺せない!!”」


 引き抜いた小杖(ワンド)で、バッシュに瞬間加速の呪文をかけるクロエ。先ほど同様に、ビンのふたを殴りつける要領でマスターの頭蓋を砕けとばかりに殴りつけるバッシュ。さらにコンボイの絞り上げが始まり……


 いやな連携技です。世の中で3番目くらいに悲惨な死に方だと思います。


『お、親方様っ?!』


 一瞬の惨劇に身をすくませた、絶好の位置にその身を占めるニンジャさん。


「あー、ちょっと遊んでもらっていいかな?」


 ジョンが、なんだかすごい笑顔とともに、人差し指で彼を挑発します。


「わりとけっこう竜の研究が進んだからさー。なあ、俺の研究成果を見てってよ」


 ジョンの口が耳まで裂け、眼が爬虫類のそれに、縦長の瞳孔に。爪が伸び、全身の肌は緑の鱗に包まれ、身体は天井に達するほどに巨大に、背中からは皮膜状の羽を持つ巨大な翼が。輝く手甲はそのままに、そこに現れたのは……オ、オジランディオン?!


『あ、あ、あひぃ?!』


 巨大な緑竜――ジョンの変化した竜は、一瞬でニンジャを八つ裂きにしました。


「うん、竜への《変身(ポリモーフ)》も完璧だ。あー面白かった」


 次の瞬間、竜の姿は消え、満腹した猫のように微笑みつつ手をすり合わせながら立つジョンが同じ位置に。いま見たものが幻影で無い証拠は、ニンジャの無残な死体、という形で私たちの足元にころがっていました。


* * *

 礼拝堂では、爪も刃も当てられぬと悟ったワイバーンとニンジャが、バッシュとサンダースに組み付いておりました。


「ジョン、アルウェン、来るな!近づけば巻き込んじまう!!」


 近づく予定はぜんぜんありません。そのために用意した儀式があるじゃないですか。……ていうか、朝、儀式の目的を説明してなかったかしら。


「我信仰の後見人として唱う、汝《移動は自由なり(フリーダム・オヴ・ムーヴメント)》。速く戒めより逃れよエルシアのバッシュ!!」


 本来、これは接触呪文ですが、退散能力を捧げることにより、アローナが術者と対象の彼我の距離を仲だって下さるのです。呪文は、確実にバッシュの身体へと到達しました。よし。


「ふん!」


 一瞬でワイバーンの組み付きから逃れるバッシュ。傍らでは、同じくクロエの呪文の助けで組み付きから逃れたサンダースが、コンボイと共闘してワイバーンを確実に、着実に仕留めていきます。


「治癒呪文を!」


 とバッシュに投げかけた《重傷治癒(キュア・シリアス)》の呪文は、なんだか《軽傷治癒(キュア・ライト)》程度の効果しか出ず、


「ご、ごめんなさい」


 なんだか申し訳なくてつい謝ってしまいました。


「や、大丈夫です司祭」

「うぁ、せ、せめてご武運を!《血刀の一撃(ブレード・オヴ・ブラッド)》よ、善き信徒の戦鶴嘴(ウォーピック)を祝福せよ!!」


 ソードボウで指の先を切り、流れ出る血でバッシュの戦鶴嘴(ウォーピック)に触れて呪力を注ぎます。この一撃が敵を討つ助けとなりますように。


「うはは!アルウェンのごめんなさい呪文ktkr!!あんまり血ぃ出すとしんぞーまひで死んじゃうんだぞ!!」


 だいじょうぶですよっ、人差し指をすこし傷つけただけですー。


 と反論したかったのですが、……その指の傷を舐めているところだったので、クロエの大声に異を唱えるタイミングを、つい……失ったのでした。もう。


* * *

「いやー、倒した倒した」


 無事に礼拝堂の敵も倒しきり、その魔法の武器や呪物も奪い取って、さて、と困ってしまったのが神殿侵入後20分目。


「ところでこれ、どこから先に進むんだ?」

「わからん」


 手当たり次第に隠し扉を探すことを良しとしないバッシュは、怪しげな場所を数箇所調べて、結局分からない、と述べるにとどまりました。


「この際だから《隠し扉探知(ディテクト・シークレットドア)》の小杖(ワンド)でも買ってくるか」


 ジョンが提案します。


「うわそれサイコー!超無駄が無い!とりあえずこの階層をしらみつぶしにしたあと帰って買い物しようぜー!!」


 虱潰しの過程で、先ほど逃した骨の悪魔を始末しましたが、これも結果だけ書いておけばいいことかな、と思うので割愛します。


* * *

 真に大事なことは、このあとブリンドルで告げられた『御言葉』のほう。


「森の姉妹アルウェン。アローナ様からのご神託です」


 この夜。アリリア様が、私たちの元へ訪れて、一息に仰いました。


「『赤い月が満ちて天空にかかるとき、地獄の門が開かれる』と。そして姉妹アルウェン、満月は明後日の晩に昇るのです」


* * *

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