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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』48・49日目 ブリンドル南門

* * *
(収穫月8日、星の日。日記49日目)

「朝日って、美しいものですね」

「無事翌日を迎えられるとはな、実に運がよかった」
「生きてるって素晴しーっ!!」

 ブリンドルの中心、ジャルマース卿の居城であるブリンドル砦の小塔から、私たちは朝焼けと戦場とを見下ろしていました。空の色は赤く、垂れ込める雲は暗く、まるで地上の炎と煙とで穢されたかのようですが、その彼方、東の空から昇る陽の輝きは、まだ諦めてはいけないと告げているかのようでした。

* * *
「状況は!」
「もう限界です!きりがない!」

 その朝最初に応援に駆けつけたところ、南門の守備兵は、すでに疲労困憊していました。まる一昼夜、無数のホブゴブリンが怒声を上げ突撃と投石を休みなく繰り返してきては、いかな防壁の優位をもってしても耐えられるものではありません。

「防衛線を引き下げた方がいいかもなー」
「うむ、城壁を放棄するのか」
「癪だがしかたねー。どうせ元から数で劣るんだ、こっちはできるだけ怪我人ださずに向こうだけ大被害ってのが理想だからな……守るなら戦力を集中した方が」

「敵襲!敵襲!」

 ジョンとサンダースの密談は、索敵兵の叫び声で中断されました。
 赤い手の軍勢の後ろから、巨大な影がいくつも近づいてくるのが見て取れます。曇り空の下、慌てる様子もなく、ゆっくりと。

「巨人……!」
「昨日よりも多いぞ!?」
「もうだめだ、早く神殿前に撤退を!」
 守備兵たちが浮き足立ちます。

 巨人たちは昨日よりもさらに遠くで足を止め、足元の岩を二つ三つ掘り起こしたかと思うと、その岩をこちらへ向けて無造作に投擲しはじめました。

「くそ、新手か!?」
「昨日より遠くに陣取りやがった!!」
「違います、あれはっ!!」
「うむ」

 岩は、いくつもの岩は、まるで小石のように軽やかに、しかしその重さを誇示するかのようにゆっくりと回転しながら、それぞれが美しい放物線を描いて、

 赤い手の軍勢の只中に、轟然と降り注ぎました。

 ホブゴブリンたちの怒声と悲鳴と、土煙と血しぶきとその他諸々とが、辛うじて無事な他の軍勢たちの頭上に降りかかります!

「……っ、きゃらのっ!!味方だ!!北の巨人だ!!曲がり牙のウォークルノーだ!!」

 巨人たちの一団の真ん中で、長大な棍棒を杖のようにして悠然と立ち、こちらを見つけたか、見覚えのある巨大な手甲を填めた右手を鷹揚に振ってくるのはまさしくウォークルノー、そしてその仲間たちは北の巨人、“曲がり牙の一族”!!

「ウォー!クル!ノー!!!」

 クロエはコンボイの上に仁王立ちになって、千切れんばかりに手を振り回しています。戦場では、突然の砲撃に混乱したホブゴブリンたちが、現れた巨人たちが味方でないと知っててんでに攻め寄ったり逃げ出したりしています。
 曲がり牙の巨人たちは、玉遊びでもするかのような気軽さで棍棒を振り回し岩を投げ、南門周辺の赤い手の大軍勢を追い散らし始めました。
 ウォークルノーも、ぐるりと肩を回したかと思うと、あの巨大な棍棒を担ぎ上げて、周囲のホブゴブリンたちをすりつぶし始めました。

「きゃっほー!!間に合った!巨人たちが間に合った!やった!やった!ざまあみろホブゴブどもーっ!!」

「よ、よし!こちらからも攻撃だ!弓兵ー!!撃てーっ」

 思いもよらぬ味方の出現に、精気を取り戻した守備兵たちが、俄然反撃をはじめました。

「うむ、これならここは大丈夫」
「だな」

 そこに、ジャルマース卿の《レアリーズ・テレパシック・ボンド》が、西門伝令からの知らせを精神感応で伝えてきました。

「……!大変です!皆!西門に竜!」
「なんだと?!」
「……デカイって言ってますよ……」

「見ろ、あれだ!!」

 バッシュが指差す先を南門の城壁から見上げれば、西の門の上空を行く赤い巨体。赤竜、アビスライアクスに違いありません!

「なあ、こういっちゃあれだが……テレルトンで見たときより大きくないか?」
「うむ、心持ち」
「きゃらの!こっちにウォークルノーが来たから、あの竜はクロエたちがあっちで始末しよう!」
 竜の頭、全色コンプリートしちゃるー!と叫びながら、クロエはコンボイを巧みに操り、城壁から大通りへと飛び降りました。

「クロエ!北の噴水広場に出よう!向こうの目的は竜の恐怖を撒き散らして、防衛線を破壊することだ!噴水広場からなら、アビスライアクスがどこを攻撃し始めても余裕で駆けつけられる!」
「りょうかーい!」

* * *

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