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【D&D】『赤き手は滅びのしるし』42・35日目午後~41日目 ブリンドル(4)

* * *
(良し月22日、星の日。日記35日目午後 ~良し月27日、地の日。日記40日目まで)

 その日の午後、赤い手の軍勢はナイモン峠を過ぎたとの知らせが届きました。彼らの到着までもうしばらくの時間があるはずです。そんなわけで、それから数日、朝は会議、昼は防衛の準備、夜は只酒、という日が続きました。

「ジャルマースさまからも、よくもてなすように言われてまさぁ」

 『呑み足りないゾンビ亭』の親父が、めっきり出番の減ったマーシフル・クロスボウボルト(行儀の悪い酔客をしつけるためのものだそうで)を壁に飾りながら言ってくれたものです。

「お宅らがいると、うちの客もちっとばかり行儀よくなっちまって、へっへ」

 嵐の前の静けさとも言うべき、この一時の平穏とともに、そのまま決戦の日を迎えるものだと思っていたのは、私たちの油断でした。

* * *
(良し月27日、地の日。日記40日目、夜)

 その晩、男性陣の部屋から聞こえたくぐもった呻きと「敵襲!」の叫びで私たちは目を覚ましました。

「!?」
「コンボーイ!!」

 クロエが間髪入れず大猿を呼ばわります。私は剣を握り、隣部屋へと駆けだしました。

 室内に三つ並んだベッドの真ん中で、正面の窓から侵入したと思しき黒装束の男が、血まみれのバッシュともみ合っています!
 手にしたショートソードは異様な拵えで、その直刃は何かを塗られてぬらりと黒光りしています。押し合うバッシュの目は激怒に燃えて、しかし受けた傷は深手と思われました。

「させぬよ!」

 サンダースが即行発動で黒装束に繰り出した右手の接触呪文は、しかし男の呪文抵抗を打ち破れません!
 黒装束の男が、その覆面の下でにたりと笑ったのが分かりました。

 しかしサンダースも、そのときにやりと笑ったのです。

「……あ、あれはダスクブレードの双掌打!!」 

 ジョン=ディーがうっかり解説役に回りました。

「な、何ィ?!」

 黒装束もうっかり負け台詞を吐きました。こと戦場での呪文について周到なサンダースは、左手にも呪文を準備していたのです!わずかな時間差を持って確実に接触した2つ目の呪文とは?!

「《衰弱光線・威力最大化(レイ・オヴ・エンフィーブルメント・マキシマイズ)》。もはや貴様の筋力は赤子同然」

 サンダースが〆の台詞をつぶやき、

「……!」

 スーディドラゴンのスーがくるりとベットの影に隠れたとき、黒装束は己の不利を悟ったか、ふわりと窓の外に飛び出しました。

「……今宵はここまで。また会おう」
 と言い残して。

* * *
「《不屈の誓いストールワート・パクト》が発動してしまうなんて。危なかったですねバッシュ」

 ますます苛烈になる戦闘と襲撃に、わたしは10日ほど前からチームみんなに《不屈の誓いストールワート・パクト》を順に立ててもらっていたのでした。1日に一度しか使えない呪文ですが、誓いを立てた者が生命の危機的状況に陥ったとき、立てられた誓いが戦士の力に変わるという、……解説するとなんだか照れくさいですが、まあそういう効力を持っています。
 彼自身の激怒の炎と《不屈の誓いストールワート・パクト》が、彼の命を繋いだと言っていいでしょう。私はアローナに感謝しつつ、彼の傷を癒しました。

「……うん、もう大丈夫です」

 毒の効果が抜けきらないバッシュが、頭を振りながら立ち上がるのを見て、全員肯きました。

「とにかく殿様のところに行こう!暗殺者が街の中にいるって伝えなきゃ!」
「うむ、これは予想外だった」
「もう今晩から街中でも野営シフトで歩哨アリってことか、とほほ」

 ジャルマース卿にも不便を強いるでしょうが、こうなると止むを得ないでしょう。
 なにせ、ブリンドルの攻防戦は、もうはじまっていたのですから。

* * *
(良し月28日、解の日。日記41日目)

 コンボイも入れる大きな会議室にベッドを運び込み、ジャルマース卿の居室までの数箇所に《アラーム》を仕掛け、街の要人には『暗殺者が侵入しているので注意せよ』と伝達すると、もう朝がやってきました。

「ああ、やれやれ」
「きゃらの!ジョン=ディー見てみて!これ似てる?似てる?」
「なんだこれ……ああ、昨日の黒装束」

 クロエが振り回してるのは、暗殺者の似顔絵でした。

「うむ、ここをこうするともう少し似る」
「おー、いい感じ!ありがとうサンダースのあんちゃん!」

「どうするんですか?クロエ」
「《念視(スクライング)》する!似顔絵あるとちょっと楽になる!」
「えー、あれは1000gpもする銀の鏡が必要だろう」

 《念視(スクライング)》は念視をする占術呪文です。たしかに念視で暗殺者の居場所が特定できれば、俄然状況は有利になります。しかし、たしかに資金面からいっても1000gpはちょっと……

「だいじょうぶ!ドルイドの《念視(スクライング)》は水溜まりでじゅうぶん!コンボイ!」
 応、とコンボイが自分の水飲み皿を――たらいですが――持って来ました。
「きたないな!顔洗ったかコンボイ!まあいいや、えい!!」

 ぼんやりと浮かび上がった男の像は、しかし焦点を結ばずに泡と消えました。

「うわあ、マジで只だ」
「むむ、惜しい。でも大丈夫、明日もやる!アルウェンも《神託(ディヴィネーション)》でお伺い立ててみろ!」
「神託は失せ物探しじゃないですよ」
「待ち人来るとかでも何でもいいから情報!情報!先手取らないと今度こそバッシュのあんちゃんがヤバいよ!!」
「え、オレなんだ」
「《不屈の誓いストールワート・パクト》を消費したからな」
「激怒もしちゃったな」
「ヤバイな」
「きゃらの!」
「あのあの、ほら今朝ちゃんと儀式の準備しましたから!いまお香焚きますから!もう一度神前に誓いましょう?ね?」

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