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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』37・28~29日目 赤岩の町~ナイモン峠~ブリンドル

* * *
(良し月15日、星の日。日記28日目)

「じゃ2日経ったし」
「行くか」
「……おう」
「きゃらの!」

 翌朝。ナイトツイストの呪いは《リムーブカース》では解けず、かくなる上は《リミテッド・ウィッシュ》で破呪するしかないと考えた私たちは、しかし当初の予定通り、ナイモン峠に障害を配置すべく出発しました。

「おーいるいる」
「きゃらの!アドリアナから貰ってきたドングリ、ぜーんぶここで使っちゃおう!!」

 眼下には赤い手の軍勢が峠を越えるべく進撃を開始したのが見て取れます。見渡すあちらこちらで、焼かれた畑や村々が、どす黒い煙を上げて西の空を煤けさせていました。

「みどりなす森よ!現れよ!ドルイド・アドリアナの祝福受けし木の実に、アローナの名を持て司祭が命ず!《プランツ・グロウス》!」
「ふんぐるい・いあいあ・トットロ・トットーロ!ドングリから森を作る毛むくじゃらのアレでナニな変なイキモノの名にかけて!《プランツ・グロウス》!!ついでにビッチの所持品で嵐呼んじゃうもんねー」

 やがて降り出した大粒の雨と雹を尻目に、私たちはブリンドルへと向かう街道を10マイルほど戻って、そこで野営を行いました。

「あれで2~3日は行軍を遅らせられる」
「嵐はたっぷり2日は治まらないよっ!」

* * *
(良し月16日、陽の日。日記29日目)

 良し月16日、昼。午前中、ブリンドルへ戻る前に、その一帯にも森を殖やした私たちは、悠然と帰還を果たしました。

「呪いのせいで昨日はよく眠れなかった。ぐらぐらする」
「おーい、《リミテッド・ウィッシュ》買ってきたぞー」
「きゃらの!さすがブリンドル、何でも売ってる!」

 “魔女が瀬”での冒険の始末をつけた私たちは、そのままジャルマース卿に事の次第を説明に向かいました。そこで、私たちは、明日、ブリンドル防衛のための戦議が行われることを教えられたのです。

「ちょうどハンマーフィスト氏族の傭兵団が到着しますね」
「防衛戦、なんとかなりそうだな」
「じゃあ夜まで街の中でもぶらつくか」

 ヤンダーラ、ウィー・ジャス、ペイロアの各寺院を訪い、避難所となった劇場を見学し、門の堅固さを確かめ、道と道のつながりを覚え……最悪の事態に備え、戦場となるかもしれない街の地理を頭に入れるべく、私たちはその日の午後いっぱい、ブリンドルの街を散策しました。

「あら!お戻りだったのですね」

 ……そこへ声をかけてきたのは、あの美貌のソーサレス、ミハ・セレイニだったのです。

* * *

* * *
「ナイモン峠はどんな様子でしたの?」
「すごい軍勢だった。でも策をふたつみっつ仕掛けてきたから、すこし足止めできたと思う」
「まあ、さすがバッシュさま」

 感に堪えぬといった風情で、豊かな胸の前で指を組み、目を潤ませるミハに、バッシュは顔を赤くしてしきりに頭をかいています。ここはペイロア神殿の一角、客間か会議室と思しき一室に、私たちは招きいれられていました。丈夫そうなテーブルにベンチ、入り口側にはペイロアの敬虔な信徒の物語と思しきタペストリが飾られ、大きな窓の外では、部屋に入れなかったクロエとコンボイが路上で組み手をしています。(「やあ」「応」「とお」「呵」)

 テーブルの向こうでは、隣り合わせに座ったバッシュとミハが、彼女のほうはあれこれと質問をし、バッシュがしどろもどろに返答する、という光景を繰り広げています。
 テーブルのこちら側では、覚めた目のサンダースと、ぶつぶつと嫉んでいるジョン=ディー、いい雰囲気の二人を直視できずに視線をさまよわせる私、の3人が、『ふたりだけのお・は・な・し』が終わるのを手持ち無沙汰に待っていました。

 なんで私たち、ここにいるのかしら。

「それで、明日の御前会議にもバッシュさまはご出席なさるのですね?」
「もちろんさ!」

「待て」
 サンダースが静かに口を開きました。
「なぜ明日の会議のことを知っている?」

「それは」
 ちろり、と小さな舌が紅いくちびるを舐め、
「神殿にいらした黄金獅子騎士団の方に聞きましたの。ブリンドルの命運を分ける大事な会議だとか」
 ミハは悪戯げに微笑みました。なるほど外の『どこも悪そうに見えない負傷者の列』は、彼女のこの微笑目当てなのですね。やれやれ、殿方というのは本当に単純というか、なんというか。

「どんなお話しになるのかしら。バッシュさまご存知?」
「いやその……大事な話だからね、おいそれとは言えないよ」
「まあ……さすがバッシュさま、おっしゃるとおりですわ」

 ダウト。バッシュ、会議前ですから私たちなにも聞かされてませんよ。ですが些細な見栄ですし彼女も感心した風ですし……いいです、もう。

「くそー、何でバッシュのがモテるんだ、俺のほうがいい男だぜー」

 主人の僻み嫉みも知らぬ気に、ジョン=ディーの新しい使い魔、スーディードラゴンのスーは、自分にゃ関係ないねとテーブル下で昼寝をしています。窓の外ではクロエとコンボイの組み手に、通りすがりのモンクが二人加わって、ちょっとした模擬戦闘になっていました。周囲には見物客が付くほどの熾烈な攻防に、時折どよめきと拍手があがるのが室内にも聞こえてきます。

 私はちいさくため息をつきました。何で私、ここにいるのかしら。

* * *
「バッシュ」

 神殿から少しはなれたところで、サンダースが何気なく言いました。

「悪いことは言わん、あの女は止めておけ」

 ? 突然の忠告にバッシュも目を丸くしています。

「詐欺師か有名人の彼女気取りか、大方そんなところだろう。あの女はなにか下心がある」
「そっかー、やっぱりなー。俺よりバッシュがモテるなんておかしいと思ったぜー」
「う、まあさ、酒場の女の甘いささやき、くらいには思ってたよ、俺だって」

 ダウト。バッシュの鼻の下はけっこうな伸び具合でした。まるで疑ってなかったと断言してもいいでしょう。

「うむ、割り切った大人の火遊びならいいが、ひとつ心配なのは、あの女の目的がよく分からぬということだ」
「流石ダスクブレードはモテクラスだぜ!なあなあサンダース、女を見る目もエルフの師匠仕込みかー?」
「ダスクブレードは“注入”が得意でな」

 くい、と腰を捻るサンダースの切り返しで2人は大笑いです。本当に殿方は単純というか、子供っぽいところがあるというか。

「ダスクブレードがモテクラスなら、非モテクラスって何きゃらのー」
「そりゃバーバリアンにレンジャーにローグだろっ」
「うっ」

 バーバリアン・レンジャー・ローグのマルチクラス、エルシアのバッシュは、胸を押さえて前かがみ。スーが退屈気にあくびをします。私たちは、笑いながら『呑み足りないゾンビ亭』への帰途につきました。

* * *

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