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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』35・26日目 ナイモン峠~魔女が瀬の村

* * *
(良し月13日、地の日。日記26日目)

 ブリンドルからタラーを超えて、ナイモン峠までは、およそ50マイル。おおよそ半日の道のりです。峠の上で、私たちはクロエの帰りを待っていました。

 視線の先には、峠と同じ名を持つナイモンの町。建物さえ砂粒ほどで、どうなっているのかはさっぱりですが、人気がないことだけはなんとなく判ります。そして、ナイモンの向こうに上がる土煙は、あかつき街道だけでなく、その左右の森からも上がっています。森のあちこちで、おそらくは彼らの付け火でしょう、悪魔の舌の様に赤い炎と朦々たる煙。その中心にいるのは、赤い手の群。うぞうぞと蠢く、蟻の絨毯のような赤黒いしみ。

「多すぎて、街道からはみ出してやがら」

 そこへ、空の高みから、ぐんぐんと近づいてくる影。若く元気な雌の鷹です。二度羽撃いて勢いを殺したものの、それでも、墜落したかと言う勢いで私たちの目の前へ着陸。ちいさな土煙が巻き上がりました。

「ただーまー」

 《自然の化身》を解いて鷹から人身になったクロエが、コンボイから水筒を受け取りながら、鳥にだけ許される高高度からの偵察の首尾を説明してくれました。

「テレルトンから進軍してきた連中と見たね。先遣隊を四方にだして森を焼き払いながら進んでる。人数が多すぎて街道でもたりないんだ」

 許すまじ、という気魄を湛えつつぐっと水を飲んで、

「空から偵察した限りじゃ、やつらが峠に差し掛かるまで2日はかかるね」

 ありがとコンボイ、と水筒を片付けさせ、で、どうする?と、全員の顔を見回しますと、

「ふむ、ではギリギリまで引き寄せてから障害物の配置といこう」

 サンダースが冷静に作戦を定めます。

「どんだけ連中の真ん中で嵐を呼んでやろうかと思ったよー」
「うむ、よく我慢した。折角なら一番効果的なところで食らわせないとな」

「ついでにこの先にある“魔女が瀬”って村も行こうぜ。俺たちの脚なら日暮れすぎには到着するし」
「……よし、空き時間を活用しよう!なんかあるかもしれんし誰か残ってるかもしれん!」

 地図でもさらりと書かれているだけの小村、“魔女が瀬”。
 そこで、私たちは今までの遭遇で一番恐ろしい怪物に相対したのです……。

* * *
 半日後。

「うええ、さすがにくたびれた」
「うむ、日が暮れるまで歩き続けたってのは久しぶりだな」
「1日に100マイル歩いたのは初めてだぁ」
「野営しなくてすむので、出し惜しみしませんよー」

 疲労の色濃い全員に、《キュアライトウーンズ》をくるくると投射すると、額の汗はすうっと引いていきました。

「おお、こんな時間にどなたかな」

と声をかけてきたのは村の老人でした。

「きゃらの!クロエはクロエ!ドルイドだよ!ここがドルイドの村だって聞いたから挨拶に来た!一番強いドルイドに会わせてほしい!」

 背後で、凛、と空気が鳴りました。振り返れば、

「あなたたちが来るのはわかっていました」

 巨大な、白い狼。その前に、年のころはクロエとそう変わらないように見える少女がひとり。

「あなたたちが何を伝えに来たのかも。ですが」

 彼女は眉を顰めて言いました。我々はいま森を離れるわけには行かない、このまま去ってほしい、と。

「きゃらの!その相棒、その姿その言いぶり!おまえドルイドだな!ドルイドの流儀に掛けて問う!困ったことがあるなら言え!クロエが助けてやる!代わりにこっちの頼みも聞いてほしー!!」

 少女は――アドランナ、と彼女は名乗りました――覚悟の程をお聞きしたけれども、一晩をこの村ですごして後、明日の朝もう一度お尋ねしたい。このまま立ち去る気はないか、と。そう告げると、老人に私たちを一晩歓待するように命じ、自身は白い狼とともに、夜の森へと消えてゆきました。

「……どうやら厄介ごとの気配だな」
「うむ、ご老人。この村はドルイドの村でいいのか?」
「ここはドルイド様方をお迎えするほんの小さな集落ですじゃ。ここいらの森を治めていなさるドルイド様方は、あのアドランナさまを筆頭に、この集落をなにかの折の集会場にしてくださっておりまする」

「とりあえず、泊めてくれ」

 一番大事なことなんだぜ的爽やかな笑顔で、ジョンが親指を立てますと、里の老人たちは村で一番のベッドを提供しますと請け負ってくれました。

 ですが、その夜。

 その夜。私たちは夢うつつに聞きました。遠く森の奥から聞こえる、陰鬱で、すすり泣くような何者かの歌声を。

* * *

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