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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』34・25日目 ブリンドル(2)

* * *
(良し月12日、水の日。日記25日目)

「さて」

 ジョンが腕まくり。……あれ、なにかはじめるんですか?

「使い魔と再契約する。一日がかりだから今日は好きにやっててちょ」

 そう言い残すと、肩のカラスにクルミを二つ三つ食べさせながら、テーブルを離れるジョン。

「ふむ、なるほど」

 サンダースが顎を撫でました。一人で判ってるの、なんだかズルくありません?

「……ああ、いや。おそらく使い魔の交換をするのでしょう。もうすこし強い生き物でも従えられる、という自信がついたのじゃないですかね」

 交換……カラスはどうなるんですか?

「そこは秘術の謎、ですね司祭。まさに術者によりけりでして。魔力を注ぎ込んで今の使い魔を別の何かに書き換えてしまうものもあり、いまの使い魔を解放して新たな使い魔を召喚するものあり、と」

 カラスと、お別れってことですか?

「ふむ……まあ、ヤツの話を総合するに、カラスにはお師匠のところに戻ってもらい、お師匠の従える魔獣の一頭をかわりに召喚するつもりらしいですがね」

 びっくりさせたいんで内緒にしてくれ、とも言われてましてね、と肩をすくめるサンダース。

「まあ……動物の相棒と違って、使い魔ってのは本人の魂と不可分の存在ですから。<呪文学>的には、次の使い魔はカラスと同じ『なにか』、という考え方もできます」

 とりあえず、今日一日はヤツに合わせて自由時間としませんか。

 サンダースの意見を受けて、私たちは今日一日を物資の購入や手間のかかる儀式の準備に費やすこととした、のですが。

* * *
 その日、一つの出来事……がありました。場所はブリンドルの城門そば、避難民と兵と市民とでごった返す大路のあたり。

* * *
「あら」

 人ごみの中から、そう声をかけてきたのは、1週間ほど前に『行きの』テレルトンで会ったソーサレス、ミハ・セレイニでした。見事な赤毛は、男性ならずとも印象深いもので

「ご無事でしたのねっ」

 自らの性的魅力を十分に理解したその声その仕草。忘れようにもなんというか、同性からは嫌われるタイプです。そして本人は気にしないうえ、むしろ男性が味方なら同性からは嫌われて当たり前、くらいに思っているのかもしれません。

「……! いや、なにうはははは」

 バッシュが照れています。まああれほどの美人に腕を絡められて、鼻がくっつかんばかりに瞳をのぞきこまれて照れない男がいたら、それこそ問題ありだとは思うのですが。

「きゃらの!あの女ー、おっぱい大っきいくらいで調ー子くれやがってー!」
「クロエ、こないだ『貧乳は希少価値でステータス』とか言ってませんでしたか」
「ちっちゃいどうしで持てる者ブルジョワ を打倒するべきだと思うんだよアルウェンのおねえちゃん!」
「私はこの100年この大きさで不自由ないんですけどー」

 鼻息の荒いクロエに比べ、男性陣はまあ……彼らの名誉のために言及は避けましょう。たしかに私たちのパーティには無い種類の存在感ですし。

「荒れ野に向かわれたと聞いて心配してましたの。わたくしたちも施療院のみなさまもここへは到着したばかりで」
「俺らもついたばかりだよ。まあ用事も済んだから戻ってきたんだ」
「まあ、奇遇ですわね」

『いまの会話総合すると、俺ら荒れ野行きあきらめて避難の殿についてきたヘタレパーティだよなー』

 ……ジョン。儀式中じゃないんですか?

『今儀式中だから“どこにでもいてどこにもいない”状態なんだ。状況は見えてるし、みんなの会話には混ざれるけど世界には影響を与えられない』

 ――よくわかりません。

「うむ、バッシュも相手の女性もまだ気がついてないからいいんじゃないか?」
「おっきいのは豊饒の象徴!ドルイド的にはOK出さないといけないんだけどこれ見よがしなのが納得いかねー!」
「今日はやけにこだわりますね」

「おっきいくらいでー、おっきいくらいでバッシュのあんちゃんにベタベタすんなー」
「うむ、まあたしかに視線誘導される大きさだ」
『くそー、召喚生物もほいほいついて来るでかさだぜ』

 色香に惑って儀式に失敗しないでくださいね。

「これからどちらへ?」
「ああ、えっとナイモン峠まで行こうと思ってるんだ、偵察に」
「まあ!危険な任務ですのね!どうかお気をつけて」

 彼女は両手でバッシュの手を豊かな胸元にぎゅっと抱きしめると、しばらくそうして見つめ合っていましたが、やがて彼女の方から手を離し、ちらちらと名残惜しげに振り返りながら去っていきました。

「……あー、なんだったのかな」
「さあな、女人の考えることはよくわからん」
「バッシュのあんちゃん!そんなにおっぱいが好きならあたしの!」

 え、と思う間もなく

「あたしのコンボイのはすっごいよ!!」

 大猿コンボイの分厚い胸板に
 バッシュが埋もれていました。

『おー、これが噂に聞くぱふぱふ』
「あんまり羨ましくないなあ」
「……! $#? %!$’!!」

* * *
 というような事もあり、その日の夜。……こちらはむしろ、戯言の部類。

* * *
「やれやれひと段落」
「時間との勝負な所、あったもんね」

 『呑み足りないゾンビ亭』の夕食、羊の煮込みを木の匙でかき回しながら、クロエが相槌を打ちます。

「奴らの本隊到着まで、卿の見込みで2週間か。では……そろそろこちらから打って出る頃合か」
「時間を稼げば稼ぐだけ防衛側が有利です。ここは助力を求めて各地を周りながら、要所要所に『森』をつくるのはどうでしょう」
「『森』?」

 怪訝な顔をしたサンダースに、クロエが。

「きゃらの!《プランツ・グロウス》だなアルウェン!クロエも1日3回使えるよ!」
「ふむ。呪文で生成した地形では、あまり長持ちしないのではありませんか?」

「? 森は育ったらずっとそのままですよ?」
「《プランツ・グロウス》でできた深ーい森は突破に4倍手間がかかる!ついでだから『嵐』も呼ぼう!」

 嬉しげに手を叩くクロエ。今度怪訝な顔になったのは、私でした。

「『嵐』?」

 疑問に答えるのは、もちろんサンダース。

「うむ《コントロール・ウェザー》か。あれはドルイドが使った場合恐ろしく効果時間が長引くのではなかったかな」

 なるほど。アルワイから奪った魔法の杖ならば、クロエに負担をかけることなく天候操作をすることができるはずです。

「そうですね、ナイモン峠まで半日もあれば着くでしょうし」
『じゃああれだ、ついでだから敵陣偵察とか補給線寸断とかやろうぜ!《イージー・トレイル》があれば魔女の森も平地同然だ』
「えーと、2日あれば十分向こうへ抜けられますね」

 儀式中のジョンはかなーり雑念多目のようです。もう今日一日、ずっとこんな具合だったので誰も驚いたりはしません。……念話って、けっこう難しい呪文じゃありませんでしたか?

「きゃらの!!いざと言うときには《センディング》でオウルライダーを救援に呼ぼう!『アルファからフォックストロット、アルファからフォックストロット、救援求む。救援求む。現在地魔女の森西方50マイル。デルタが負傷。治癒呪文も打ち止めだ!チャーリー1と2を盾にブラボーとタンゴが応戦中。敵多数!』」

「えーと、101文字です。『~打ち止めだ!』まででちょうど75文字」
「……なんでそんなことになってんだ」

 思わず突っ込むバッシュ。この場合、突っ込んだら負けと見ましたよ?
 そしてさらに悪化する(クロエの中の)戦況。

「『もうだめだ!』『しっかりしろ!』と励ましあうアローナ急行の耳に聞こえてくる翼の音!“BRRRRRR…”」
「なんか違う音に聞こえますが」

 蟲の羽音というかノームの飛行機械というか。

「航空支援で蹴散らされるゴブリンども!速射するエルフの弓兵が『早く乗り込め!』……うはー燃えるーぅ」

「まあ保険と言うことで。アリリア=フェルさま、そういう伝言を差し上げた際にはセリリア様によろしくお伝えください」
「って、いまのフォックストロットってフェル のFですか」

 突然話題を振られて咳き込み、危うくタンカードを取り落としそうになるアリリアさま。
 この一連の冒険の発端となった、あの神託の手紙を私たちに手渡した張本人、アローナの高位司祭、アリリア=フェルさまは、我々の『手紙宅配』の結果を聞き取りすべく、この酒席に同伴していたわけですけれども。

「ありがたいことに、我らの名前は頭文字を取っても被りませんのでね」

 Sanders―Arwen―Bash―Chloe―Dee。なるほど、たしかに。

「大学の5段階評価みたいですねー」
「したがってフォネティック的にはタンゴではなくシエラで頼むぞ、チャーリー1」
「Rog!」

 えー、それ覚えなきゃいけないの《センディング》を唱える私ですよね?

* * *

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