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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』30・22日夕 テレルトン脱出

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 むかしむかし。

 エルシアの谷に、悪い竜の軍隊が攻め込んできたことがあった。

 このテレルトンも、悪い竜の軍隊、『赤い手の群』に襲われて、みんな燃えてしまったのだよ。

 うん、勇敢な男たちがな。囮役を買って出て、町の真ん中に急ごしらえの塞を築いてな。

 そうして敵をひきつけたおかげで、町の連中を無事にブリンドルへと逃がすことができたのだよ。

 そうそう、『“アローナ急行”と赤い手の戦争』のお話さ。

 お前のひいじいさまは、バッシュさまと一緒に戦ったことがあるんだぞ。ほかならぬブリンドル攻防戦のことさ。そりゃあすごい戦いだったそうだよ? なにせ……

 ああ、今日はその話ではなかったねえ。

――そう、ひいじいさまたちの囮はとても役に立った。役に立ちすぎて、敵がみんなテレルトンをぐるりと包囲してしまった。さあ、じいさまたちは困ってしまった。これでは逃げ出す方法もない。だって、みんな普段はただの百姓さ。まさか空は飛べないし、魔法で消えうせる事だってできやしなかったからね。

 もっとも、空には赤くて大きな竜が飛んでいたそうだから、空を飛んでだって逃げられなかったろうねえ。

 ところが。ひいじいさまたちは運が良かった。テレルトンのそばを、クロエさまたち“アローナ急行”が通りかかったんだ。クロエさまは大きなもぐらに変身すると、えいやっと地面を掘りぬいて、たちまち脱出用の長い長い隧道をつくってしまった。

 ひいじいさまたちは喜んだね。これで家族のところに戻れる、死ななくて済む、と。

 クロエさまが持ってきた魔法の薬で、元気を取り戻したじいさまがたは、敵に気づかれないようこっそりこっそりその隧道で町の外へと逃げ出した。“急行”の仲間たちはそのあいだ、町に取り残された人がいないか見てまわっていたそうじゃよ。

 さあ、じいさまがたは無事に逃げ出した。穴は町から半マイルも離れた丘の上まで続いていたそうな。やあ、本当のことかどうかはわからないねえ。そうそう、丘と言うのはあの『穴が丘』のことだよ。よく知っているねえ。いいや、もう穴は残っていないよ。子供が遊ぶと危ないし、なによりそのままにしておいたら何がその穴を使うか知れたもんじゃあないからねえ。たぶん、ひいじいさまがたが埋めてしまったんだろうね。

 囮に残っていた仲間たちがみんな穴からでてくるまで、ひいじいさまたちはそこでじっと待っていたんだと。しかし、内心気が気ではなかったろうね。目と鼻の先に燃やされているテレルトンがあり、その周囲にたくさんの鬼や巨人や竜や狼がひしめいていて、誰かがひょいと振り向いたら見つかってしまうかもしれないからね。

 そうしてじりじりと待って、待って、待った。ようやく最後の一人が穴から這い出してきたとき、

 ああ、なんということだろう。

 その丘に、熊と梟を混ぜ合わせたような悪い悪い化け物が二匹、ひょっこりと現れたのさ。

『むむむ、にんげんだ。おれたちはらぺこ、たべちまおう』
『そうだな、さっそくいただくとしよう』

 言うが早いか、化け物たちはひいじいさまたちの仲間をひとりずつ捕まえて、頭からむしゃむしゃと食べてしまった。

『ううん、おれのはやせっぽちだった。おまえはどうだ』
『おれのはしぶかった。つぎのをためそう』

 じいさまたちはぶったまげた。このままじゃあ、みんな食べられてしまう。悲鳴を上げて右往左往さ。そうして化け物たちがもう一人食べようと大口を開けたとき、

 空から声が降ってきた。

鴉々!!鴉々!!
『ニゲロ、ニゲロ、穴ニ逃ゲ込メ! 穴ダ、穴ダ、穴ニ飛ビ込メ!!』

――はたして、飛び込んできたのは大きな大きなカラスだった。ものを言う魔法のカラスが、大声でわめきながら、化け物とじいさまがたの間をひらりひらりと飛び回ったからたまらない。

『からすがしゃべった!』
『からすがしゃべった!たいようがやってくる!!』

 今度は、化け物たちが肝を潰す番だった。喋るカラスといえば、金烏玉兎の言葉の通り、天界の使いに違いないからだ。このままここで人間を食べていたら、カラスの親玉の『太陽』が――ペイロア様がやってくるかもしれない!と化け物たちは信じ込んでしまった。

 その隙を突いて、じいさまたちはもと来た穴へ。腰を抜かした化け物たちは丘の向こうへ。それぞれ這々の体で逃げていった、というわけさ。

 そのすこうし後に、“アローナ急行”が戻ってきた。町に最後まで残っていた優しい娘と、賢いばあさんをつれて。

 カラスは、近くの木の枝でその様子を見守っていたが、穴から最後に、魔法使いのジョン=ディーが現れると、胸を張って彼の方へ飛び、その耳に自慢げに自分の手柄をささやいた。

 そう、もの言うカラスの正体は、魔法使いの使い魔だったのさ。

「カラスよ、よくやった」

 魔法使いは自分の使い魔を褒めてやると、その働きに対して、最高のほうびを与えることにした。

「口先一つで30人もの命を救うとは大したやつだ。ほうびにお前を知恵ある鳥のまま、自由な身分にしてやろう」

 そう言うと、魔法使いはカラスにかけていた主従の魔法を解いて、自由な鳥にしてやった。

 カラスは喜んで飛び上がり、空中で三回転すると、そのまま近くの森へと飛んでいった。

 いまでも、もの言うカラスは森にいて、テレルトンに悪い魔物が近づかないよう、ときどき森から飛んできては、このへんを見回っているそうな。

 ひいじいさまがカラスの羽を大事に取っておくようになったのは、そんなわけなのさ。だから、カラスは我が家の守り神。
 森で魔物にあったなら、カラスの羽を投げ出して逃げるといい。魔物はカラスに騙されたことを思い出して、きっとカラスを探しに行ってしまうから。

 ……ん? ああ、そのとき町に最後まで残っていた勇敢な娘が、ひいじいさんのお嫁さん、つまりお前のひいばあさんだよ。

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(日記22日目、良し月9日に追記)

――というようなお話を作ってみたり。実際にあったのは

・穴の出口で、兵隊さんたちがアウルベアに襲われた
・カラスの機転で、みんな穴の中に逃げ込んだ
・ジョン=ディーがカラスを使い魔から解放したのは、ブリンドルについてから

・アウルベアはそのあと、コンボイがひき肉みたいにしてしまいました

 200年くらいしてまたあの辺を訪ねたら、この『お話』を広めてみるのも面白いかもしれませんねー。

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