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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』28・22日夕 テレルトン

* * *
 荒野から戻ったその日。テレルトンは燃えていました。

 郊外の民家農家、農地や牧草地は蹂躙され、平地はゴブリンたちが埋め尽くす恐ろしいありさまです。あちこちに巨人たちの姿も見え、てんでに岩を城塞へ投げ入れては下卑た笑い声を響かせています。
 テレルトンからの本格的な反攻がないことから、赤い手の軍団は散発的な攻撃を繰り返しながら、熾火の燃えるようにゆっくりと容赦なく進軍をしたのでしょう。あたりに死と破壊をまき散らしながら。
 ゴブリンの軍団は巨人にエティンに魔狼に竜を加え、正直どれほどの数がいるのかも分かりません。

「……4~5000はいるな」

 ぽつりとバッシュが漏らしました。対する我々はわずかに5人。空気が重くなりました。

「町の城塞の内側に篝り火が見える。まだ誰か残って戦っているんだ」
「うむ、あすこにいるものは英雄だな」
「透明化の手段があればなー」

 町から少し離れたこの小高い丘からは、城塞の外にひしめくゴブリンたちが、略奪に走り戦利品を奪い合い、戦いの趨勢が決した故のおごりが見て取れます。奴らにも隙がないわけではありません。しかし。

「侵入できたとしても、中の人間を連れ出すことは恐ろしく困難だ」
「せめて街の様子だけでも知りたいですね……」
「無理!無理無理!竜飛んでるもん!カラス飛ばしたら絶対見つかるって!」

 鴉々、とジョン=ディーの肩の大鴉も同意しました。

「うむ、我らの転移呪文もこの距離は埋めがたい……」

 ときおり響く、巨人の投げる岩の石壁にぶち当たる音と、あたりに満ちる血と汚物と煤と炎の臭い。私は、負け戦を見るのは初めてではありません。
 結局、誰かが言い出さなければならないのです。『ここは諦めて、次の戦いに備えよう』と。それは町に残る英雄たちを見捨てる、残酷な一言なのです。彼らが言い出せないのも無理はありません、なによりも自分の魂に敗北を認めることになるその一言を。

 と、そのときです。今までうつむいていたクロエが、コンボイの背で飛び上がりました。

「ばっちゃが言ってた!絶望は愚か者の結論だって!」
「しかしクロエ」
「バッシュのあんちゃん!こっから町までどのくらい?」
「……あー、半マイルってところだな」

「きゃらの!今こそ魔法少女の真髄を見せるとき!『いあ!いあ!はすたあ!はすたあ くふあやく ぶるぐとむ ぶぐとらぐるん ぶるぐとむ あい!あい!はすたあ!大きなアナグマさんになーれ!』」

 《自然の化身》たるドルイド、クロエの姿が見る見るうちにアナグマへと変わっていきます。

ダイア・バジャー巨大アナグマ!その手があったか!」
 ジョン=ディーが破顔一笑しました。

「もぐもぐ、もぐもぐもぐも!」
「うむなるほど、それなら《ウィンド・アット・バック》の効果も受けられるわけか」
 サンダースが身振り手振りするアナグマに相槌を打ちました。

「ど、どういうことですか?」
「アルウェンアルウェン、ダイア・バジャーは穴掘りの達人なんだ。1分でおよそ30ヤードは掘り進める。半マイルなら30分かからないよ!」
「おまけにクロエは今朝使った《ウィンド・アット・バック》の呪文影響下だ。野外での移動距離は倍速。ということは?」
「……途中硬い岩で迂回するようなことがあっても半時間かからずに脱出トンネルを開通させられる!よし、それだ!」
 言うが早いか、バッシュが荷物を背負いました。

「もぐもぐ!」
 あっけにとられる私の前で、みるみる地面に潜っていくアナグマ=クロエ。直径5フィートの穴が斜めに下って、皆躊躇せずクロエの後ろに続きます。私もあわてて穴に飛び込みました。穴の中で前の誰かが陽光棒をつかったようです。全員が笑っていました。あらゆる困難を克服する、人間ならではの笑顔でした。

「もう……!」
 湿った土のトンネルの中でしたが、やっぱり私も笑ってしまいました。町に残った英雄たちは驚くでしょう。彼らを待つ人たちは喜ぶでしょう。ゴブリンどもは悔しがることでしょう。

「もぐもぐ!」
 クロエも、多分、あれは笑っていたのだと思います。私の145年の生涯で、アナグマの笑い顔をみたのはこれが初めての事でした。

* * *

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Comments

今回のような、絶望的な状況に飛び込む冒険者達という展開は非常に燃えますね。

手詰まりに近い状況を打開する一手を打ったクロエが、とてもカッコカワいいですね。

こういういい雰囲気で進むセッションでは、各PCが見せ場を作り、テンポ良く進むという良いスパイラルができることがありますよね。実際のセッションがそうだったのではないかと勝手に予想しているわけなんですがいかがでしょう。

次回の“アローナ急行”のテレルトンでの活躍がとても楽しみです。

Posted by: ユージ | May 26, 2008 11:28 PM

 わりとまんまですよ。台詞やなにやらは結構捏造がありますが、行動と結果はもうプレイそのまんまです。『赤い手』は名作ですし、これをこのメンツで遊べた自分は大変に運がいいなと思うのであります。

 そしてテレルトン編はこの後1話でおしまいだったり。

Posted by: 飛竜/いしやま | May 28, 2008 02:04 AM

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