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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』24・21日昼 死霊王の獅子窟(3)

* * *
 さらに奥へ。

「狭い。《エンタングル》使いたい。外出たい」

 狭い通路で窮屈げなコンボイの背で、クロエがぶつぶつ言いっぱなしです。周囲には絶えず半透明な獅子の影。

「実害はないとは言え、たまらんなこの幽霊の数は」

 たしかに。現世との意思疎通も図れないほどに朧な霊ですから、監視の役すら果たせないのでしょうが、それにしてもこの数はちょっと不自然です。

「まあリッチの棲処だから?死霊がたくさんでも不思議はないかなと」
「いや、むしろアレの失敗作、と見たほうがよさそうだ」

 足を止めたサンダースが顎で示せば、その通路の先からのっそりと現れたのは、輪郭もはっきりとした獅子……の霊。

「あー。では僭越ながら」

 聖印を手に、死霊の退散を試みますと、周囲の弱弱しい霊たちと合わせて、大柄な獅子の霊も尻尾を巻いて姿を消します。

「すぐ戻ってくるでしょうから、どんどん先に進みましょう」
「素晴しい」

 ところが。

「……なんですぐ戻ってきてしまうのでしょう」
「もう一体いたとか、逃げてったやつとは違う連中が近づいてきたとか、そういうことじゃないかな」
「きゃらの!」

 むう。どんだけ獅子の霊が居ついているんでしょうかこの祠。少々先には、こちらを睨みつけるダイアライオンの霊。さきほどの大型の獅子霊よりも、さらに凶悪な風情です。うーん。

「では奥の手を。《輝かしき陽光の友にして、一角獣の主たる女神の名において命ずる、死霊よ、滅却せよ!!!》」

 我が女神アローナの封ずる領域は5つ、そのうちの1つがこの《太陽》領域です。死霊がもっとも苦手とする太陽の力を借りることで、通常ならば死霊を追い散らす祈りの効果が、死霊を霧散させるほどの威力に跳ね上がるのです。

「おお!」

 霊験は灼に、私の視界から霊たちの姿がどんどんと消えて行きます。

「……おお?!」

 ……あれ? 普段よりもはるかに狭い範囲の霊だけが滅却され、そして、そこ止まり。
 一番の目標である、ダイアライオンの霊まで滅却の力が及びません! ますます猛り、こちらに挑みかかる姿勢のダイアライオン。

「きゃらの!獅子の霊は背景だと思ってた!そかそか、腐っても霊だもんな!ダイアライオンよりも手前から滅却されていったから、ちっこい霊たちが壁になっちゃったんだ!!」

 ……あれれ? お、おかしいですよ?

「もう一回いける?」
 とジョン。私は眉根を寄せ、ちいさく頭を振りました。滅却の奇跡は、一日一回と定められているのです。奥の手ですもの。

「うむ、致し方ありません。あとは我々に」
「……任せてくれ」

 触霊錬金カプセルを砕き、素早くダイアライオンに迫る二人。あ、あれぇー。

「せっかくの見せ場だったのにな!アルウェン残念!」
 応。

 愉快そうな顔のクロエに、私は苦笑いして見せるのが精一杯でした。

* * *
 次の部屋は、少々広く、しかし不快な粘液と腐臭に満ちておりました。部屋の守り手は、主である死霊王の邪悪さを体現したかのような連中だったのです。

「なんだありゃ」
「……レッサー・ボーンドリンカー、かな」

 コボルドやゴブリンほどの大きさの、しかし腹部から二本の触手を生やし蠢かせる、異形の人影。衣服らしいものは身につけておらず、表情は醜悪そのもの。肌はいたるところにできものがあり、つぶれ、膿みをしたたらせています。

「まともな生き物ではないな。一気に畳みたいが……うむ、ここだと一歩足りないな」

「! ではおまかせください、《イレイション》!」

「むっ?」
「……?」
「んー、いける!一歩くらいなんとかなるぜサンダース!」
「うむ、そんな気がしてきた。よし、行くぞ!」

「きゃらの?アルウェン、いまの呪文なに?」
「《意気軒昂》とでもいいましょうか。アローナの加護で、自信が溢れやる気が促進されるという呪文なのです」
「げげぇー、なんというアッパー系」

 挟撃を受けぬよう陣取り、バッシュとサンダース、コンボイが敵勢を分断しつつ後方からは《スピリチュアル・ボウ》神弓ジェネヴィアーの援護射撃。奇怪な人型の魔物も、一体また一体と倒れて行きます。

「狭いがやれる!いつもの布陣が引けないのは残念だがな!」
「すごいぞ《relations》!♪じゃあねなんて言わないで~♪」
「♪またねって言って~♪」

 調子に乗ったのか乗りすぎたのか歌い始めるクロエにサンダース。歌いださぬまでも、足で拍子を取るバッシュ。リ、《relations》?

「あの、《relations》ではなく《イレイション》ですー」

 応?

 リズムを取るように拳を上下に振り回すコンボイが、敵を吹き飛ばしつつ歌う二人を不思議そうに見やります。

「あと一体!」
「よし、《relations》があるなら俺だって!!」

「《イレイション》ですったらー」

 わたしの訂正を聞いてか聞かずか、ジョンまでもが近接戦に飛び出しました。呪文の効果か歌のせいか、ジョンの体にもまるで歴戦の兵士のような覇気が溢れています。控えめに表現しても優男であるところの秘術使いが振り上げた右手には、過日入手した魔法の銀のメイスが!!

「うおりゃ!!」
 ジョンがそのまま勢いよく振りぬくと、鈍器は過たず怪物の脳天を叩き割りました。

「きゃらの!術者が前に出て殴った!!《relations》すげぇー!!」

「《イレイション》……うー」

 怪我人を出さずに戦闘は終了したので、まあ良しとするべき……なのでしょうが……

「うむ、いい呪文でした!次も頼みます司祭」
「きゃらの!“アローナ急行”の戦闘テーマ曲にしちゃおう」

 ……わたしも歌わないとだめですかー。

「……まあ、冗談ですよ」

 バッシュが頭をかきます。

「《relations》すごかったきゃらのー」
「うむ、ジョンの肉弾戦は初めて見たぞ」
「《relations》のノリと魔法武器の命中精度に釣られた。俺としたことが、つい。いやーうっかり」
 嗚呼ー。

「……たぶん」

 うー、これはいつもの次元界ジョークの一種なのでしょうか、それとも人間たちの間で流行っている楽曲なのでしょうか。いっぺん問いただす必要があるのでしょうか、これ以上触れずにそっとしておいたほうがいいのでしょうか。

* * *

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《relations》参考:

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