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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』23・21日昼 死霊王の獅子窟(2)

* * *
 近づいてみれば獅子窟は、見上げると首が痛くなるほどの大きさ高さがありました。
 周囲には、怨念とも残念とも言える程度の獅子の霊たちが大量に、そこかしこに歩き、飛び、わだかまっています。

「どの幽霊も現世に影響を与えるほどの力はないようですが……なかには悪霊になっているのもいそうですね」
「幽霊、コンボイの爪が当たらないからキライ」

 前肢の間、胸板の真ん中へ続く広く緩やかな階段。そこには、さしわたし10フィートほどの大きなアーチが、扉もなくぽっかりと開けられていたのでした。階段の下から覗おうにも、屋内は暗く、様子は定かではありません。

「でも、たしかになんかいた。きもちだけでも忍び足で近づこう」
「おぅ」

 各々の武器を構え、階段に足をかけた私たち。半ばまで昇ったところで、

「《ダンシング・ライツ》」

 サンダースが、魔法の明かりを4つ、屋内に投射しました。秘術使いならではの、暗がりを100フィート先から確認する手段で、彼の得意の魔法の1つです。

 そして、蛍のような《踊る灯》の明かりに照らし出されたのは、青い鱗の巨体。入り口を通るにはおそらく身を縮こめなければならないであろう、長大な蛇のような不恰好な竜のような体躯はとぐろを巻いて、胴の中ほどからは六対十二脚の太い肢、そして爪。目は爛々と赤く燃え、頭部の角が天井を擦らんばかりです。そして背中には、その巨体には不釣合いに小さな、蝙蝠様の皮膜の翼。
 魔法の灯の出現に驚いたか、一気に頭をもたげ、前肢四本を構え、戦いの姿勢を取りました。その大きいこと、大きいこと。まるで洞穴に押し込められた樫の木のようです。

「……デケェ!」
「青っ!」
「きゃらの!」

「魔獣ビーヒア!!電撃のブレスは直線!捕まれば飲み込まれるぞ!」
「うわっ、なんで知ってるんだサンダース!!っていうか、散開!!無駄ブレスを撃たせるんだ!」
「……了解!」

 森の木々の間を駆け抜けるが如く、ビーヒアの肢の間を風のようにすり抜けるバッシュ、その対角へと踊りこむサンダース。後衛である私たちを守るように、コンボイが入り口に立ち塞がります。
 そのまま、必殺の一刀/一撃を放つ二人と一匹。

 しかし。

「くそっ、なんて外皮だ!」
「硬いっ?!」
「きゃらの!!」

 しかし、ビーヒアの竜鱗にも似た強靭な皮革が、彼らの攻撃の尽くを逸らしまたは威力を減じさせてしまったのです。

「ならば!《勇気よ、想いよ、力に変われ!我らの剣に拳に爪に矢に、邪を討つ力よ宿れ!!!!》」
 聖印を手に、私は新たに授かった呪文を唱えはじめました。

『カッ』

 三方向に散った戦士たちを見て取るや、ビーヒアは長大な胴をくねらせつつ、サンダースに掴みかかりました!二撃、三撃はかわせども、執拗に圧し掛かろうとする肢はすべて囮!

「むっ……ぐうっ」

 凶悪な顎が、サンダースの体躯をがっちりとかみ締めました!そのまま彼を高々とくわえ上げるビーヒア。

「きゃらの!サンダースのあんちゃんを離せコラー!!!」
 噴!噴!!
「……ああ、噛み付いて動かないならいっそ好都合!」

 そう、サンダースを飲み込むつもりで足を止めたビーヒアの、それがたぶん、単純な失策でした。

「《正 義 の 祝 福ブレッシング・オヴ・ザ・ライチャス 》!正しき心よ!悪の巌を粉砕せしめよ、汝、トネリコの根の岩をも砕くが如く!!」

 《ブレッシング・オヴ・ザ・ライチャス》の効果は、剣ではなく剣を振るう味方の心に与えられるのです。

『ガガガッ?!』

 つまり、
 バッシュの左右の剣と盾との攻撃は、通常の五割増で重く、
 コンボイの四回の引っかき、引き裂き、そして噛みつきは、通常の二倍は痛みを与え、
 わたしの弓から放たれた矢の一撃は、やはり貫通するほどの衝撃を載せて。

『……ッ?!』

 すべて、アローナの聖なる神気に祝福された恐るべき威力を伴って、巨獣ビーヒアの命脈を絶ったのです。

 ぐらり、と揺れ、そのままどうと横倒しになるビーヒア。

* * *
* * *

「一発で止めをさせたねー!」
「いやー、危険な相手だった」
「……はじめて使ってみましたが、この呪文、ジョン=ディーの召喚術を待って投射すれば、召喚獣の攻撃にもアローナの御手が助けをくださいますね」
「うむ、その前に全力で叩き潰す方を薦めるが」

 止めの一撃の一手前、《ディメンジョン・ホップ》でビーヒアの顎から逃れたサンダースが、何食わぬ顔で会話に参加しています。

「呪文で全体の戦闘力を引き上げるのも、“アローナ急行”の戦術としてはありなんですねー。よくわかりました」
「ドルイドはそのへん選択肢少ないんだよっ」
「代わりに便利な呪文があるじゃないですか」

 強敵、ビーヒアの死体を目の前に、私たちは一瞬で勝利をものにした幸運に感謝しつつ、上気したままで互いを讃えあったのでした。

「こいつがタイアガランかなあ?」
「……名前を聞く暇もなかった」
「うむ、彼も口が塞がっていたようだからな」
「だれがうまいことを言えと」

* * *

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