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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』22・21日 死霊王の獅子窟

* * *
(良し月、8日。日記21日目)

 夜半からの嵐で、私たちは目的地手前での足踏みを余儀なくされていました。

 といっても、テントの中で思い思いに時間を潰しているだけなのですが。
 庇のように延びた岩棚の下に張られたテントは、外の大嵐に直接晒されることもなく、いたって快適です。

「……思ったんですが、雨をしのぐ呪文って無いですね」
「寒暖なら《エンデュア・エレメンツ》でいけるのだが」
「呪文学的には、雨と飛礫の区別がつけられないかららしいやな」
「?」
「説明は専門的になりすぎるから、しない」

 ジョンがあっさりと会話を〆めてしまいます。

「うむ……おそらく、《プレスティディジテイション》で可能でしょう」

 《奇術》呪文ですか。

「水に濡れない、程度の技ならば奇術の範疇でしょう。一時間は持ちますし」

 ふつうは雨の中を一時間も歩かないですね、確かに。

「雨宿りすれば済む話ですからなぁ」

 敢えて雨中を往くならば濡れてあたりまえ、着替えくらい用意しましょうね、ということでしょうか。

「……雨の中をあえて進まないとダメ、なんて状況、ありますか」

 今。まさに今、是が非でも前進したいところです。

「だいじょーぶだいじょーぶ。俺ら充分時間稼いでるはずだから、2~3時間の雨宿りはたいしたことないって」
 嗚呼。

「この嵐では《プレスティディジテイション》を使ったとしても、強風で打ち倒されてしまうでしょうな。雨と寒さを呪文でしのいでも、風の力に対抗する呪文はありません」

 なるほど。

「そして、呪文を研究し開発する位階の術師ともなれば、まあ雨とか風とか関係ないのですよアルウェン司祭」

 ……なぜですか?

「高位の秘術師は《瞬間移動》するからです。あるいは《風歩き》。あるいは《次元界転移》。およそ自然の猛威に立ち向かおうという愚か者は秘術使いにはおりません」
「そーゆー英雄はどこにいるのかねえー。正直、この冒険は俺らにゃ荷が重すぎないかねぇー」
 嗚呼。

「……ドレリンでもらった、金貨500枚の大仕事だからな」
「そっかー、500枚かー、あの500枚でこんだけやらされてんのかー、やっぱり報酬の桁が違うと仕事の質もガラッと変わるなあー」

 バッシュの一言に、ジョンが妙な関心をしています。

「『賢しい者は雨の由来を尋ね、賢いものは雨の避け方を尋ねる』とよく言います。我ら秘術使いは天候の成り立ちなど夢想しますので、司祭、信仰呪文の使い手どの。ひとつ《雨を避ける呪文》の発明など如何ですか?」

 キャラバンを雨から守れる呪文なんて、きっと素敵ですね。

「……えーっと、『【知力】が高いと雨が降る理由がわかる、【判断力】が高いと雨宿りの方法を考える』だったら聞いたことがある」

 ……クロエとコンボイはこの嵐の中、外で見張りをしています。

「これが大自然の挑戦なら、クロエは受けてたーつっ!!」

 だそうで、まあドルイドの言うことですから話半分で。たぶん嵐や雷がくるとブーツの中ぐしゃぐしゃにしてはしゃぐタイプですからクロエさん。

「……クロエは雨宿りしませんね」
「してないね」
「うむドルイドですからな」
「……」

 外で、風と戯れていると思しきクロエの嬌声と、同じく雨風の中転げ周りドラミングをする野生に還ってしまいそうなコンボイの声とが切れ切れに聞こえてきますが、

「……この嵐の中出かけるような物好きはまあいないさ」
「うむ、獅子窟の住人たちも嵐が去るのをじっと待っていることでしょう」
「考えようによってはこの嵐もツキのうちか」

 彼女が雨宿りしない理由については全員が口を噤んだところで、外からクロエの笑い声が聞こえてきました。

「きゃらの!」

 ……風邪を引きますよー。

* * *

 嵐が去ったあとの荒れ野に、胸をそらし彼方を見つめる一頭の獅子。

 姿は雄雄しく、しかしその顎は大きく開かれ、牙の一つ一つは子供の背丈ほどもありました。

 死霊王の獅子窟、とは、

 城ほどもある巨大な獅子の彫像だったのです。

「胸板に大穴、口のところがテラス、と。いい趣味だねどうも」
「……クロエが戻ってきた」

 《自然の化身》の能力で大鷲に姿を変え、空中から高速で偵察する、と飛び出していったのですが、なんともお早いお帰りです。

「……きゃらのっ!!いた!なんかいた!」
「うむ、なにがいた」
「なんか!なんかでっかいのがいた!すっげえ青いかった!!」

 青くて大きい、って……

「並みの生き物じゃないね」
「……青くちゃなあ」
「うむ、竜かもしれん」

 青竜は邪を好み雷を吐く、と聞いたことがあります。

「仮想敵は大型青竜にけってーい!《マス・レジスト・エナジー・サンダー!!!》」
「死霊王が配備した只の門番である、という可能性もありますよ」
「只の門番がなんとなく雷吐いたり噛み付いてきたりしたら困るじゃん!!」
「話し合いをするにも、こちらの実力の程は見せておく必要があるでしょうな」

 賭けには見せ札が必要なものです、うむ、とサンダース。

「……じゃいっちょ行くか」
「きゃらの!!」

* * *

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