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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』06・5日目 再びどくろ大橋

* * *
「《ご武運を!!》」

 《ブレス》を合図に、バッシュとサンダース、コンボイとクロエが飛んで行きます――文字通り。昨日買ってきた『飛行薬』で飛翔し、橋手前の見張り塔を急襲する3人と1匹。緑の竜と敵の主力は橋の向こう、となれば、この戦闘を制するのは移動力!

「《来い!天上の黄金と黒曜で練られし水晶の羽持つ蟲よ!!》」

 ジョンが召喚を始めま……む、蟲?

「セレスチャル・ジャイアント・ビー!君に決めた!!」
 嗚呼!!嗚呼!!

 森の奥、遠くに避難したカラスが鳴いています。……ツッコミかもしれません。

 北西の塔にいた竜が、器用に腕を伸ばし、足元からポーションを取り出し、飲み干すのが見えました。ぐっと膨らむ全身の筋肉。

「ううっ、やばそうだなあ」
「苦戦は覚悟のうえですよね!」

 少々上昇し、高度を合わせて塔の上の見張りを射ます。……が、当りません。

「ばっちゃが言ってた!戦いを始める前には鏑矢を撃つものだって!!」

 一つ目の塔に取り付いたコンボイとクロエが、私の弓の腕前に茶々を入れつつ確実に橋頭堡を確保して行きます。

「竜が来るぞ!!!」
 複雑な手の動きで、召喚した巨大な蜂を竜に立ち向かわせるジョン。

「む、無理ですよ!!」
「招来生物は死なない。ちょうど夢を見ているようなもので――」

 竜へと取り付き、その毒針を果敢に突き立てるも、竜の腕の一振りでバラバラに砕かれる巨大な蜂。

「招来体が破壊されれば、元いた場所に戻るだけなんだ」

 砕かれた蜂の身体が空中に溶け消えて行きます……竜の右脇に突き立てられた、黒く鈍く輝く毒針とびくびくと脈打つ毒嚢もまた、もといた場所へと消えうせていくのが見えました。

「……ただし、その影響は残るぜ」

 がふ、と竜が血を吐きました。
『ア? ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ?!?!』

「蜂の一刺し、ってやつだな。効くとは思わなかったが、こりゃー僥倖だ」
「毒ですか!!」
「うん、熊でもイチコロな蜂の毒。……ちょっとは効いたようだ」

 竜が不規則に二度、三度と羽ばたいて、明らかに高度を落とします。竜が目眩を覚えるほどの毒、ですか。

『!!!』

 竜が、手にしていた小瓶を飲み干し、姿を晦まします。透明化!なんとやっかいな。

「引き続き召喚!セレスチャル・バジャー!!」
 美しい毛並みのアナグマが、するりとジョンの足元に現れます。

「竜がどっちから来るのか警戒しててくれ!!」
 アナグマは、黒く濡れた鼻をひくひくさせながら、あちこちを眺め回していましたが、すぐに、宙を行く目に見えない"何か"を感じ取り、ひたとそちらを睨み据えました。なるほど、《鋭敏感覚》を頼りに彼を召喚したのですね!!

「回り込むかよ!ブレス来るぞ、散れ!!」

 果たして、ジョンの目前に姿を現した竜の、大きく開いた赤い口腔の奥から吐き出される、暗緑色の腐食性ガス!目を庇い、反射的に息を止めるジョン。しかし、その酸のガスの威力は、それでも、彼の肌を焼き髪を焦がします。前以って投射していた《マス・レジスト・エナジー》が無ければ、命を落としていたでしょう。
 
「……うむ、そこだ」

 ジョンの先、橋の前で待ち構えていたサンダースが、まんまと姿を現した竜に、見慣れない色の皮袋を勢いよく投げつけました。竜の鱗で裂け、飛散する中身の……茶色いネバネバ?!
 茶色い粘性体はあっと言う間に弾性を強めて、竜の腕といわず翼といわず絡みつきます。

「……うっは、そんなもん買ってたのか」
「うむ、これはいいぞ。なにせ相手の足を殺す」

 咳き込みながら、サンダースの先見の明を讃えるジョン。錬金術物品『足止め袋』とは、ずいぶん奇妙なものを用意していたものです。そして、その用意は図に当りました。
 足止め袋のネバネバに翼を絡げられた竜が、バッシュとサンダースの前に酷い姿勢で不時着し、ころがります。

「ぶっころ☆」

 コンボイの上で、親指を下に向けるクロエ。

『させぬ!オジランディオン、今行くぞ!!』

 叫び声がしました。橋の向こうの陣地、そのテントの影から、ヴラース砦で逃したバグベアソーサラーが谷を越えて一直線に飛んでくるではありませんか。その得意技は《ライトニング・ボルト》。直線状に伸びるあの電撃は脅威ですが、複数の敵を相手にするとき、もっとも効力を発揮する投射位置と言うのは、そう多くありません。

 私は、一歩横に動き、

『そこだ!!』

 《ライトニング・ボルト》のための絶好の位置取り、と彼が考えるであろう場所。そこは、私たちの立ち位置から必然的に彼自身が『決めてしまう』もの。

 ――敵の複数を直線的に捉えられ。
 ――呪文が届き、オジランディオンを巻き込まず。
 ――敵戦士の近接攻撃を受けぬ場所。

 すなわち、谷の上空。橋からすこしはなれた、誰の手も届かない空域。

……一歩動くことで、彼を、その場所へと誘導しました。

「ええ、そこですね。《まじないよ裂けよ、失せよ、消えよ!》」

 《ディスペル・マジック》。どうせ落ちるなら、悪行の報いを受けるといいのです!!砦の塔のてっぺんで惨殺されていた名も無い農夫。彼らが襲ったであろう街道沿いの農家の一家。彼らの無念を胸に撃った信仰の呪払の力が、ソーサラーの魔法を三つが三つとも貫き、破壊し、無効化するのを感じました。

『な、なにいいいいい!?!』

 《フライ》の呪文を失い、ゆっくりと降下し始めるバグベア。一瞬後、その《フライ》の安全措置(ゆるやかな降下)も力を失い、なすすべも無く谷底へと落ちてゆきます。どくろ谷の深さ、およそ150フィート。谷底では、どくろ川の急流が岩を洗い、水しぶきがごつごつとした岸壁を叩き、下流へ下流へどうどうと流れる水面はところどころに凶悪な岩を露出させています。

『コス!!!』

 緑竜、オジランディオンが飛びました。筋肉の力で跳躍し、広げられぬ翼を無理やりに羽ばたかせて、飛礫のように谷底へと落ちていくソーサラー、コスを、落下の勢いも重ねて矢のように追いすがります。なんという友情。

 が。

「にがして!にがさん!ギャーの刑!!」
 応!!

 勝機を逃さず、《マスター・エア》の力で、落ちるように飛ぶ竜よりも速く飛ぶコンボイ。その背のクロエは、どんな無理な姿勢でも落ちぬという飛行乗騎用の鞍に跨り、なおコンボイを竜へとけしかけ続けます。

『コス!!コスーッ!!!!』
「追いついたっ!コンボイ、ふるぼっこっ!!」

 谷底から同時に聞こえたのは、肉と骨と爪と鱗のぶつかる音、竜の悲鳴、何かが水面に叩きつけられる破裂音。

 ややあって、コンボイとクロエが谷から這い上がってきました。

「やー、《マスター・エア》切れちゃった。でもね、採ったどー!!!」

 ボロボロのオジランディオンの死体と、川の水でびしょ濡れの上、あらぬ方向に関節の捻じ曲がった血袋のようなコスの死体とを鞍の前へと積み上げて。

 ……あ、その他の弓兵やら見張りやらはバッシュとサンダースがきれいに始末をしてしまいました。

* * *
「指令書、計画書の類いはなし、と」
「よし、消し炭の丘まで行こう」
「おー」

* * *

(07・5~6日目 消し炭の丘~ドレリンに続く)

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