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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』05・3~5日目 砦~どくろ大橋~ドレリン

* * *
「『コスのねじろ』、か」
「じゃああのバグベアを『コス』と呼ぶか」
「さっきのマンティコアかもしれないぜ」
「俺たち、敵に名前聞かないからなあ」

 地図中いたるところにゴブリン語で書き込まれた、エルシア谷略奪の計画(対訳をバッシュが書き加えてくれました)。ホブゴブリンの盗賊団にしては、些か大風呂敷が過ぎるというものです。しかし。

「『ここの部族みなハーンのもとにあつまる』か。部族……森には2、3部族入ってるって言ったっけ?」
「町長の見立てでは、たしか」
 魔女の森に、100匹からのゴブリン、ホブゴブリンがいるのではないか、と。

「うむ。問題は、奴らにかなりの資産があり、それを与えた黒幕がいそうだ、ということだ」

 ヴォーグ乗りですら携えていた、高品質の武器に防具。ゴブリン族は大抵、拾ったか奪ったかした武器で武装するばかりですので、その手にあるものときたら赤錆びた小剣がいいところ、と思いこんでいたのですが。

「どいつもこいつも必ず《軽傷治療》の薬壜を持っていやがる。くそぉ、ひとつ50gpだぞ?!」
「まあ、ありがたく頂いておこうじゃないか」

 地図を舐めるように見ていたクロエが、叫びました。
「『赤き手がわたるまでオジランディオンがまもる』。とりあえず、このどくろ谷の大橋まで行って見よう!!クロエはオジランディオンが見たいよ!!」

 縮尺が正しければ、ドレリン~砦までと同じ程度。8マイルといったところでしょうか。

「我らの足ならば2時間、か」
「行って戻る。そのあとは、とりあえずここで泊まるか、ジョールの小屋まで戻るか、か」

 陽はまだ東の空にありますが、風はもう熱を帯び、今日も暑い一日になりそうな気配です。

「さあ、行こう!」
 もちろん、敵の規模の把握は重要な任務です。とにかく橋までは向かう。その先はそれから考える。 この地図と計画を信用するなら、かなり大掛かりな襲撃であることは間違いはなく、それはとりもなおさず、町に警告を与える機会は早ければ早いほどいいということなのですから。

一介の冒険者のあいまいな説明で、町が動くはずもありません。私たちに必要なのは、情報と、証拠なのです。

* * *
 街道を行き、涼し川を越えて1時間。

「?」

 道端に、大きな人型の……柱、と言えば良いのでしょうか。カカシ、というには大きすぎ、なにせ頭が樽です。てっぺんにはカシドリが巣を架けています。

「……たぶん巨人の領地を標すものだ」
 バッシュが呟きます。なるほど、巨人の人形と見えないこともありません。樽の下に横に渡された棒は、では通せんぼを意味するのでしょうか。

「ばっちゃが言ってた!短い人生、見たいものは全部見てから死ねって!!」
「クロエー、それマジで言ってる?」
「巨人を見に行く……のか?」

 ジョンとサンダースが眉の根を寄せ、互いに見交わしています。ややあって、ジョンが説得に当たりました。

「クロエ。とりあえずどくろの橋と消し炭の丘を見に行こうぜ。もし巨人が敵で……というか、人間を敵と考えていたら間違いなく総力戦だ。俺たちは呪文と体力をほとんど消費して、砦に戻って一休み、ってことになる。それだけ地図の略奪計画は進んじまうんだ」

「でもこのでっけえガントレットはたぶん巨人のだ!クロエはこれを返してみたい!」
「交渉は、こじれる事だってある」
「……うー」

「じゃあ帰りに寄ろうよー。ちょっとだけでいいからー」
「そいつは、帰り道に考えようぜ」

 このあと、この約束は、それどころではなくなってしまうのですが。

* * *
(竜だ!緑色の竜だ!!)
 差し渡し100フィートはあろうかという、馬車二台が十分にすれ違える大橋、どくろ大橋。その両端にはそれぞれ二つの見張り塔があり、対岸には橋の警備をするのであろうホブゴブリンたちの野営陣地。……陣地!!そして、塔からあたりを睥睨する緑色の、竜!!

(コスが逃げ帰ったのはきっとここだ!それであの緑色がオジランディオンにちがいないよ!!)
(竜を使役するホブゴブリンの盗賊団だと?!ありえん!これはもう、立派な……)
(……軍勢だ)
(うむ)
(どうする?谷は深い、橋は長い、竜はいる)
(コスも飛ぶ)

 全員の意見は即一致しました。すなわち、ドレリンへの一時撤退です。

(まずは砦まで。そのあとどうする?ジョールの小屋まで戻るか)
(強行軍だ。どうせ一泊するなら見張りを立てずに眠れる、町がいい)

 強行軍で疲労しても、そのまま休めるなら問題は無いわけです。町の手前で何者かと遭遇する危険性はありますが、砦で一泊すれば一晩中夜襲の恐怖におびえてすごすことになるでしょう。

(すると……元来た道をさらに戻って、そうだな、日没後1時間くらいでドレリンまで戻ることができそうだぜ)
(よしバッシュ、先導頼む)
(わかった)

* * *
「ははは、ホブゴブリンの軍勢の侵略ですと?やはり彼奴ばらめ、そのような計画を立てておりましたか!しかしそれを知ったからには一安心。さっそく皆に知らせて防衛の準備を……ところで、敵はどれほどで?50ですか、100ですか」

「たぶん100とか200じゃ……ないよね」
「おそらく。敵は全ての兵に高品質の武器を与え、魔法の薬を支給し、指揮官には魔法の武器を与える始末。おまけに敵には竜もいるのだ」

「りゅ、竜?!」
 ウィストンさんが咳き込みました。まあ、気持は分かります。

「とりあえず、この地図の写しを作ってください。そして町の主だった人々と話し合いを。『竜をも従えた、規模不明のホブゴブリンの軍団が、鋭い武器や魔法の鎧を身に帯びてドレリン、いやエルシアを狙っている』と」

「地図の件は引き受けました。町長、さっそく皆を」
 ソラナ隊長が促します。
「……わ、わかりました。皆さんはどうするのですか?是非話し合いに参加してはくださらんか。正直、その、まだ信じられん」

「いいですよ。私たちは明日、いろいろと準備をしますので」
「ジョールのところか砦かで一泊するはずだった一日だ、まあ話し合いの結論聞いてからでも遅くないし」
 ジョンが肩をすくめます。
「バッシュの先導あればこその余裕だな」
「うむ、敵もまさかここまで先んじられているとは思うまい」

* * *

* * *
「まあそうだよねー」
 明けて5日め。昨日のドレリンの話し合いは

「信じられん」

 の一言に集約されます。町の有力者たちは、私たちの報告を信用しきれず、一日行われた話し合いは結局のところ、もうしばらく様子を見よう、という結論になったのでした。だって、証拠らしいものはゴブリン語で書付がされた稚拙な地図が一枚と、素性の知れない冒険者の報告だけ。まあ、仕方ないですよね。

「竜の頭、取ってくる!したら町の連中も信じる!まちがいない!!」

「ついでに消し炭の丘まで偵察に行く、と。ソラナ隊長、できればこの件をブリンドルまで」
「わかりました。早馬を手配してみましょう」

「よし、出発だ!!」

* * *

(06・5日目 再びどくろ大橋に続く)

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