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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』04・3日目 ヴラース砦

* * *
 ジョールに別れを告げ、踏み分け道を進むこと30分。細い道の左右は、鬱蒼と茂る原生林です。

「……?」

 クロエが立ち止まりました。

「どうしましたか?」

「木の化け物だ!」

 クロエが叫び、コンボイが道の脇に生えた蔦と倒木に向かって突進しました。あっけに取られる私たちの目の前で、その蔦と倒木が立ち上がったのです!!!

「シャンブリング・マウンド?!」

 シャンブリング・マウンド。別名シャンブラー。体重は優に3000ポンドを超える大型の肉食植物です。太い蔦を腕のように振り回し、犠牲者を昏倒させ肥料にしてしまうという……

「ひでぇ化け物だ!気配がしないわけだ!」
「植物なら退散させられます!」
 森を守護するアローナのご威光なら、死霊同様、異形の植物も退散させられるはず!!!私は前衛の後ろに回りつつ、聖印を取り出し、聖句を紡ごうとして、

「アローナの名において!退きなさqあwせdrftgyふじこlp!」

 思いっきり舌を噛みました。ジョン=ディーと使い魔のカラスがこっちを見ています。目が点になる、というのは、ああ、ああいう表情を言うのですねー、などと悠長なことは言っていられません。痛いです。もの凄く。地味に。

「……噛みまみた」

「……うん」
 嗚呼!と鳴く大鴉レイヴン のカラス(名前)と、居たたまれない風情のジョン。シャンブラーは、コンボイとサンダース、バッシュが、振り回される太い蔦を避けつつ挟撃に持ち込んでいます。数回打撃を与えているようですが、

「堅い!!さすが木材、ムダに堅いよっ!!!」

「殴れ!時間を稼ぐだけでいい!」

 ……はっ、落ち込んでいる場合ではありません!異形と言えども野生生物、無益な殺生が行われるくらいなら、この聖印にかけて退散を!!

「森の加護を受けっ」
 まず、木の根につまづきました。

「清浄なる角にかけっ、けふっけふっ」
 次に、声を張り上げようとして咳き込みました。

「アローナのにゃに、あぅううう!」
 ……しまいには、聖句を諳んじようとして、かみました。

「ばっちゃが言ってた!これって『馬の耳に念仏』っていうの!」

 ……この日記、ここだけ消しちゃおうかしら……今思い出しても赤面ものの失敗です。

「むっ、《雷握撃ショッキング・グラスプ》!!」

 そんな頼りない司祭のことはさておき、サンダースの放った秘術注入の必殺剣は、シャンブラーを二つに断ったものの、電撃は全く効果を上げなかったようでした。
 
「木材、こっぱみじん!!」
 コンボイにいたるところをかきむしらせ、蔦のひとつを引きちぎっていたクロエが勝利の声を上げました。
「しかも結構いろいろ飲み込んでるなあ」
「消化して、金属だけが残ったんだろうな」
「なるほど、犠牲者の……」

 シャンブラーの残骸から出てくる金貨銀貨を武器の鞘などでつつきながら、皆、私がそっと聖印をしまうのを見ないでいてくれました。……あああああああ、ああもう!!己の不甲斐なさに、これを書いている今も頬のほてりが消えません。今晩の見張りの時間、瞑想に入るまでの内省は長く苦痛に満ちたものになりそうです。

* * *
 さらに30分ばかり下ったあたりに、その砦はありました。川とは反対側(つまり南がわの)踏み分け道の森の縁、岩がちの高台の上に、崩れかけた塔が見えます。塔は、投石器で攻撃を受けたかのように、いくつか大きな穴が開いていました。

「うっは!マジ巨人とやったんだ!すげぇなヴラース!!」
「このまま行くと砦から見下ろされる位置だな。森に入るか」
「そうしよう」

 道なき道を進むこと5分。砦の東側、あかつき街道へ繋がる登り道へと回り込みました。

「……けっこう足跡がある」
「区別がつくか、バッシュ」
「……たぶんゴブリンだ。あと、大きな獣もいる」

 狼でしょうか。私たちは声を潜め、砦へと忍び寄りました。

 崩された正面入り口と、やはり砕かれた左右の門塔。そこらじゅうに直径5フィートはありそうな岩がごろごろところがっており、右手の門塔の前には、巨大な白骨死体が棍棒を手にうずもれています。風雨に晒され白くなったこうべの眼窩からは、ノラニンジンの白い花が花火のように咲いています。

 右手が木造の厩、左手が背の低い建物。その角、砦の壁と接するところにも、巨人の白骨が身を横たえています。砦の中も、ごろごろと岩が転がっていました。

「巨人おっかねー」
「しっ」

 突き当たり左手が砦の兵舎、だったところでしょうか。平屋で、南西の塔の根元、砦の一角を占めています。

(まずは手前からだな)
(ごーごー)

 バッシュが厩の両開きの扉の前で耳を澄ませます。ややあって、ちいさく頷く我らの斥候。

(なんかいる。きぃきぃ騒いでる)
(もちろんごー!!!)

 勢いよく開けられる扉の奥に、低い樽を間になにやらはしゃいでいる背の低い小鬼……ゴブリンが二匹。奥手に、大きな狼の姿が!

(ウォーグ乗り!)

 ……全員が厩に飛び込みました。……無理でしょう、ですって?なるほど、普通のパーティなら確かに入り口で詰まってしまったことでしょう。ですが、私たちのチームは些か風変わりですので……

 まず飛び込むバッシュとサンダース。引き続いて突入するコンボイとクロエ。ゴブリンたちは撤退しつつウォーグへと駆け寄ります。

「ふっ」
 ウォーグに乗りつけようとするゴブリンたちを背中から切りつける二人、その背後から

「よーいしょ」
 長いリーチを生かして殴りつけるコンボイ(に指示を出すクロエ)。ジョンと私はその後ろからついていく形です。

(閉めよう!)
(はい!)

 できればこの乱闘で他の注意を引きたくありません、私とジョンは厩の扉を閉ざしました。

* * *
 かなり長い厩を、奥へ。ゴブリンとウォーグが二組とも始末されるのと同時に、背後の扉に何者かの影が。

『……!!敵ダ!!!』

 牛頭人身の怪物、ミノタウロス!!楽師の歌う昔話から抜け出してきたかと思わんばかりの、角を持つ毛むくじゃらの巨漢が、両刃の大斧を携え、両開きの扉の前に立ち塞がっているではありませんか!!

「いれちゃだめー!!!」
 天井を懸垂の要領で移動したコンボイが、ミノタウロスの前に飛び降ります!

「《衰弱光線(レイ・オヴ・エンフィーブルメント)》!!」
 サンダースの弱体化光線がミノタウロスをたじろがせた次の瞬間。 

『はははは虫けらめ!!死ぬがいいぞ!!』

 そこへ飛び込んでくる、ホブゴブリンよりも大きな姿……と、飛んでる?!バグベアが空を飛んできます!!

「やべぇ!空中戦は予想してなかった!!」
『死ね!死ね!死ぬのだ!!』
 厩に滑り込んできたバグベアは、そのまま奥手にいる私とジョンに向かい、その手から一筋の電撃を放ちました!!

「あぎゃぎゃらばっ、し、死ぬ!」
 遮蔽を求め、馬房のひとつに逃げ込むジョン。
「ジョン!しっかり!!」
『さらに死ね!!』
 厩の中を滑空し、さらに電撃を放つバグベアソーサラー。
「死ぬ!死んでしまう!!俺のカラスが!!」

「ふぁああっ!マンティコアまで?!」
 クロエがコンボイの上で、中庭を見ながら目を剥いています。えーっと、なんですって?
「新手だ!!」
「くそっ」
 さらに厩の前へ駆けつけるホブゴブリンたち。うわあ、ここ、本当に要塞じゃないですか!!!

* * *
 コンボイの《風の王者マスター・エア》、サンダースとバッシュの息のあった挟撃で、結局のところ彼ら全員を倒すことはできたのですが……

『ク、クソッ?!?!』
「あ、まてっ!!」

 ただひとり、バグベアのソーサラーだけは取り逃がしてしまいました。

「うー、惜しい。《風の王者マスター・エア》の効果時間が切れちゃったよう」
 両腕をあげたまま、垂直に降りてくるコンボイと、しょんぼりするクロエ。もうソーサラーの姿は豆粒ほどにしか見えません。

「北か」
「うー」

「ジョン!!ジョン!!大丈夫ですか!!」
「お……俺よりも、こいつの怪我を……」
 嗚呼!!嗚呼!!

 あー、大鴉のカラス(名前)も酷い火傷です。私は、我が身よりも使い魔を案じるジョンの優しさに、ふと和むものを感じながら、彼の望みどおりに治癒呪文を使いました。

「カラスのこと、大事にしてるんですね」
「あ、そりゃもう。今死なれると《上級使い魔》にするのにいつまでかかるやらで」
 嗚呼!!嗚呼!!
 
 ……前言撤回。がんばれカラスくん。

* * *
 隠し部屋で見つけた、砦の主ヴラースの白骨死体と、片手半の柄を持つ冷気を帯びた魔剣。そして、どう見ても巨人用の戦篭手。

「ばっちゃが言ってた!落し物は届けようって!!」
「巨人にぃー?」

 それと、この砦の権利書。

「ばっちゃが言ってた!森に落ちてるものは、拾ったら自分のものだって!!」
「クロエのばっちゃは実践的だなあ」

 そして、作戦用の部屋と思しき個室で見つけた、殴り書きのような一枚の地図。

「……これは」
「こりゃあ……」
「……これは……どうしましょう?」

 そこに書かれていたのは、ホブゴブリンによる、壮大なまでのエルシア谷侵略計画でした……!!

* * *
(05:“砦~大橋~ドレリン”へ続く)

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