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【D&D】『赤い手は滅びのしるし』03・2日目 ジョールの小屋

* * *
 森番、ジョールさんの小屋は魔女の森の奥手、踏み分け道を一日進んだところにありました。

「これ、バッシュの先導がなかったらいずれ森の中で一泊コースだなあ」
「トロルがうろうろしてるような森で野宿するなんてぞっとしないぜ」

 途中、早速怪物に出くわした私たち。川を越えて森沿いに北東へ進んで……森に入って、すぐ。

「魔女の森と呼ばれるだけのことはある」
「……この森、なんだか不穏な空気で落ち着かないんですよね……」

 最初の遭遇が大きなトロル。しかも2体とあっては、この先、どんな怪物が現れるか判ったものじゃありません。無事に撃退したものの、私たちはおっかなびっくり踏み分け道を進んできたのでした。

 エルシア川に流れ込む小川、早瀬川のほとりに建つ小さな猟師小屋の前には、賢そうな番犬が3頭。見慣れぬ客に、構え、唸り、吠え付けます。

「太くていい声の犬ですね」
「おっさん!ジョールのおっさん!いないか!ちょっと頼みたいことがあるんで、この犬黙らしちゃくれませんかね!!」

 ジョンの声に気がついたか、犬の声に呼ばれたか。小屋の奥から、ごま塩頭の老狩人が現れました。

* * *
「なるほどのう」
 ジョールさんは溜息をつきました。
「確かにここひと月でゴブリン共を見かけることがもの凄く増えた。ドレリンの連中も心配し始めたかぇ……」

「おっちゃん!とりあえず連中がねぐらにしそうなトコロ知らないか?」

「おお、そうだのう……うむ、ヴラース砦などはいかにも野盗の根城になりそうじゃのう」
「ヴラース砦?」
「……『ヴラースと巨人』は昔話だろ。本当にあったのか?」
 バッシュが口を挟みました。ジョールさんが応えます。

「由来はよく知らんが、もう少し川を遡るとあかつき街道に出るでな。そのまま1時間ばかし北へ歩くとヴラース砦と呼ばれる廃墟があるよ」

「昔話ってどんなのですか、バッシュ?」
「あーえっと、たしか」

――むかしむかし。とても強い戦士ヴラースは、王国の外れに自分の城を建てようと、巨人の山の目の前に自分の砦を造りました。怒ったのは巨人です。さっそく巨人がやってきて、『ここは先祖代々俺たちの土地だ。勝手な事をしないで欲しい』と言いました。『ばかめ』ヴラースは言いました。『俺は強い。強い奴はなにをしてもいいのだ』そして、剣を抜くと巨人を殺してしまいました。

「……ひどい話ですね」
「まだ続くんだよ」

――巨人たちは怒りました。話し合うために使者を買って出た、一族の英雄が無残にも不意打ちで殺されてしまったからです。山に住む巨人たちは、総出で友達の弔い合戦に現れました。これにはヴラースもびっくりしてしまいました。『待て、話し合おう』ヴラースは慌てて言いました。巨人たちの新しい族長は答えました。『うるさい、彼の敵討ちだ。お前は言ったな、強い奴は何をしてもいいのだと。俺たちもその言葉に従うぞ』そうして巨人たちは、砦の周りの丘や山をどんどんと投げつけて、砦をめちゃくちゃに壊してしまいました。ヴラースは、自分の作った砦に潰されて死んでしまいましたとさ。

「……おしまい」
「弱肉強食自然の習い!巨人もヴラースも間違ってない!いい話!」
「“増長は身を滅ぼす”とか“話し合い大事”とかそういう話ですよね?」

「まあそういう名前で呼ばれる砦の廃墟があるんじゃよ。そこそこ大きいで、野盗が雨をしのぐとすりゃあそこを使わん手はないな。ただ」
「ただ?」
「あすこは最近幽霊が出るとか恐ろしいうめき声が聞こえてくるとかで、森の連中もよう近づかん」
「幽霊ですか……」

「できればあかつき街道を使わずに近づきたいな。それはともかく」

「?」

「ご老人、一晩泊めてくれ!」
 ジョンが一番大事なことを切り出しました。

* * *
 その晩。大きな物音で眼を覚ました私たちは、小声で状況を整理しました。

「……何の音ですか?」
「……少し離れたところを、何か大きなものが」
「……あー、たまにこういうことがおきるんじゃよ魔女の森。そんなときはわしゃ絶対に小屋から出ん」
「……実践的忠告ありがとうよ、じいさん」
「……うむ、木をなぎ倒しながら這い進む音に聞こえる」
「……具体的過ぎてスリリング!ゎーぉゎーぉ!!」
「……しめた、離れてく!もうちょっと様子を見よう!!」
「……しっ」

「……」
「…………」
「………………」

「……離れていった……道に出たか川に落ちたか飛んで行ったか」
「……どれもイヤですね」
「……暗いしまだ近くにいるかもだし、とりあえず……気配を殺して寝ようぜ」
「……賛成っ」

* * *
「わーお!すげえ、木が全部折れたり埋まったり!何が通り過ぎたのかなっ」
「なんだろなあ」
「何でしょうねぇ」
「なんだったのかな!気になるな!ちょこっとでも見ておけばよかったかなっ」

 クロエ、世の中には知らなくていいことってあると思いますよ。

* * *
 翌日。森の踏み分け道をさらに西へ。あかつき街道をよぎって、もう一度森に。そこから北に進めば、涼し川のほとりにでます。

「こいつが森の古道じゃ。魔女の森を東西に伸びとるが、まあどこまで道として使えるかはよう知らん。少なくともエルシア川にぶつかるまでは道の体を成しとるよ。そんで、ここを川沿いに2、3マイルも下るとヴラース砦じゃよ」
「うむ、ありがとうご老人。おそらく帰りに寄らせて貰うことになると思うが、良しなに頼む」
「ああ、気ぃつけてな」

 老人は犬を連れ、早々に来た道を引き返していきます。

「朝早くに出た甲斐がありましたね」
「あと1時間程度で砦か」

「さ、鬼が出るか蛇が出るか、はたまた魔物か幽霊か。さくさく行くぜ!」

 朝方の霧も晴れ、日は昇り空は良い天気です。にも関わらずこの森の異様な静けさに、私は思わず身震いをしました。なにかが起きています。この森で、おそろしい何かが。アリリアさまの受けた神託とはいったい、どのようなものだったのでしょうか……。

* * *

(04:ヴラース砦に続く)

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