« 【迷キン】暗雲!超☆魔神学園! | Main | 【迷キン】錯綜!超☆魔神学園! »

【迷キン】濁流!超☆魔神学園!

* * *
「こっ、これは!」

http://www.town.iwaizumi.iwate.jp/~ryusendo/rd_hot070918.htm

 鉱山の入り口からは水がどうどうとあふれ出ていました。

「これはひどい。まるで洪水だ。崩落って話じゃなかったっけ」
「地底湖の水があふれたとかそういうのでしょうか」
「なんとなく、メタなネタの気配を感じるのですが」
「気、気のせいですよー」

「とりあえず!」
 オーボエが宣言した。
「休憩しよう!」
 ……道中、迷宮化で道に迷い、普段の3倍も時間がかかってしまったのである。執行部も委員(配下)たちもくたくたであった。

* * *
「よし、休憩終了!ではいざ突入!」
 じゃぶじゃぶと濁流に足を踏み込むオーボエと仲間たち。

「ところでですねー」
「なんだスコーン、言ってみろ」
「情報収集しなくてよかったんでしょうかー」

**おおっと!『水槽』!**

「がぼっ!深っ、深い!思ったより深い!」
「足がっ!足が取られるっ!!」
「わはー、流れるプールの様ですがむしろ命がけー」
「鼻にっ!水が鼻にっ!!」

 大騒ぎだったという。

* * *
「なんだお前たち、だらしないなあ。あのくらいの水は大したことないだろう」

 生徒会長オーボエは平然と言ってのけた。見れば制服の何処にも濡れた様子さえない。

「さ、さすが深階の御子、水界環境はお手の物と言うことですか……」
 しっとりと濡れてしまった制服が気持ち悪いらしく、ぴったり張り付いたシャツやスカートをあちらこちら持ち上げては絞るダチュラの回りは、最前列席を取ってこの素晴しい景色を独り占めしようとする不埒者の殺気であふれかえっていた。
 「押すな!そこをどけ!」「おおお、ダチュラさまの御美足っ」「水ー水ーダチュラ様のお髪から滴り落ちた水はいらんかねー」「売るな!不敬者!」「スカートのなら買うぞ!」「ダチュラさま(;´Д`)ハァハァ」

「まったくですよ。みな準備が足りないんじゃありませんか?」
 スク水でえへんと胸を張るクリップが、オーボエの意見に同調した。その背後にはクリップの配下、通称『すいえいぶ』が全員スク水でストレッチしている。オーボエと同じく、先ほどの『水槽』トラップに疲弊させられた様子はなく、むしろたまの水泳を楽しんだ様子であった。
 「濡れスク水!いや濡れるのは当たり前だがクリップ様の普段着が濡れてるのかと思うと妙な興奮がっ!」「落ち着け同志!これ以上近づけば『すいえいぶ』に編入されてしまうぞ!」「ううっ、それはいやだなあ」「スク水ストレッチ(;´Д`)ハァハァハァハァ」

「これがホントの水を得た魚ですねー」
「……どれが?」
 オレンジの突っ込みも無理はない。ダチュラとクリップの周囲は、なんだかギラギラしたオーラでいやな輝きを放っていたのであった。

 と、そのとき。

「むっ」
 オーボエの視界の隅で、何かが立ち上がった!

「生存者か!」
「違いますだ!もっと前に死んで弔われなかった仲間たちの『死にぞこない』ですだよ!」

「生存者で!ないなら!戦闘開始ーっ!」
「まっ……」
 ダチュラが制するまもなく、オーボエが拳を振り上げた。次の瞬間、死にぞこないの背後に隠れていた『鉄砲魚』たちが火を噴いた!!

「そこで先手を取られてどうするんですか会長!!」
「だ、だってー」

* * *
 多少苦戦したものの、死にぞこないと鉄砲魚を撃退した執行部一同。
 「それにしてもさっきのは、先手とってたら随分楽だったろうなあ」「いやはや、死人が出なかったんだからよしとしようぜ」「会長は戦闘得意じゃないからしかたないな」「しぃっ、聞こえたら気を悪くなさるぜ」

 ……しっかり聞こえていたのであった。たしかにオーボエは、武勇に秀でたランドメーカーではない。しかし、執行部ではダチュラに次ぐ才覚の持ち主であり、怪物との戦いでも決して引けを取るようなお粗末な腕前ではないのである。しかし、出発前の失敗が響いてか、学生たちの些細な一言一言が、オーボエには自分を責める針のようであった。

「……向いてないのかなあ」

「オー ボエ さまっ」
 スタッカートを効かせて、主人を振り向かせると、侍女は短いスカートをつまんだ舞踏会風の礼をした。
「なんだスコーン」

「はい、オーボエさま。……デート、しません?」
 不意打ちだった。
「ていうかデートしましょう」
 言い直した。
「……お嫌ですか?」
 捨てられた仔犬っぽい顔をした。そして、すう、と息を吸い込むと、

「あのっ、私っ!オーボエさまと恋人関係を結ぶためにですね!デートの作法を学んできたわけですよ!せっかく武人の家に生まれたんだから、乱舞とか学べばよかったんでしょうけども!今日は2レベルスタートだよーって言われた瞬間、すぽーんと舞い上がっちゃいまして!こう、学園の端から端まで聞き込みして回って、あらゆる状況あらゆるシチュでデートを可能にする、自称デートの達人になって不肖スコーン、恥ずかしながら帰ってまいりましたーっ!></」

 すごい勢いでまくし立てた。

「ああ、分かった分かった。で、何するんだ、こんな坑道のなかで」

「……手」
「ん?」
「……手を、握ってくださいませんか。それで、それだけで結構です……」
 侍女は、暗がりでもそれと分かるほど赤面しながら、もじもじと要求した。

* * *
 星術師でもあるオーボエは、星の欠片を二つ持っている。人気のない坑道を二人で散策するのに、それは十分な明るさだった。
「でもさあ」
「なんですか?」
「お前、宦官だよなあ」
「つまり、ついてないですよ?二次性徴前にちょん切っちゃったからどこもかしこもすべすべつるつるですよ?」
 ……オーボエは、つい、笑った。スコーンは、それを見て、実に満足そうに微笑んだ。
 そうして二人は、一度も手を繋がないまま、キャンプへと戻っていった。

* * *

|

« 【迷キン】暗雲!超☆魔神学園! | Main | 【迷キン】錯綜!超☆魔神学園! »

Comments

The comments to this entry are closed.