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【迷キン】絶対主義魔法合衆国興亡紀4

* * *
 禁酒禁煙。
   ―――絶対主義魔法合衆国憲法修正第18条

 18条は廃止。18条作ったやつはバーカバーカ。
   ―――絶対主義魔法合衆国憲法修正第21条

 チューバ閣下は、修正21条を制定されたという点においても、偉大な名君と言えるだろう。
  ――民の声
 

* * *
「3部屋目……と」
「うわあ」

 入り組んだ室内にうずたかく積み上げられた用途不明の小人形の数々。乱雑に詰め込まれた、ボードゲームとサプリと絶版ルール。どこで拾ってきたのか応接セットに枯れた観葉植物に傾いたテーブルが数卓。放置された【お弁当】の食い残し。そしてあちこちに散らばったゴミ袋と空ペットボトル。ペットボトルの中には気持程度水が入っていたのか、タバコの吸殻がふやけてどす黄色いニコチンを染み出させているものもある。無論、室内は曰くなんとも言いがたい異臭が漂っていた。

「なんか生臭い……」

 もぞり、とゴミ袋が動いた。いや、人間だ。

「おせあーっすぅ」
「おえぁーっすぅ」
「あじゃじゃしたー」

 口々に呪文のような何事かをつぶやく。

「な、なに?」
「ふ、どうやら挨拶らしいな。『おせぁーすぅ、にーとー』」

「ニートじゃねー、ゲーマーだ」
 なかの一人が反論した。

「お、ひとつの言葉を使えるのか。では話が早い。君たち、王宮はどっちだね」
「ば、ばっかやろう!ここはニートランドの神聖な『娯楽室』!普段は口を聞くのも面倒なニートたちが金曜夜ごとに集まってしゃべらなくていいボードゲームやカードゲームで対人関係スキルを磨く社交の場だぜ!マトモな口を利いてほしかったらまず挨拶しな!」

「ニートごときに諫められるのは癪だが、言ってることは正しい。すまない、謝罪する」
 ヨミが静かに頭を下げたとたん、

「ううううるせぇ!俺は本来こんなところでマスターするような程度の低い人間じゃねえんだ!!」
「お、おれ実は迷宮病でさ……みてよこの指、ほら指紋のところ……うずうずでしょ……」
「あんたらさー、ゲームが好きなのー、『娯楽室』が好きなのー、どっちー? おれ『ゲーム大好き!ゲーム命!』ってヲタクとは口利きたくないんだよねー」
「ふっへっへっへっへ、俺昨日寝てないのに『娯楽室』来ちゃった」
「おおおおれのオリジナルシステムを見てくれっ!これは400回もテストプレイを繰り返した自信作なんだっ!!!主にSFと西部劇をプレイするために構築されてるっっっ!食事はウズラ!移動は幅跳び!ドワーフは水路を虎眼流“水鎧”!!」

「ヤバイ、こいつら【人間の屑】ですよ」
「演武を始める奴がいたら満貫ですね」
 ひそひそと頭を寄せてささやきあうランドメーカーたち。
「ふんっふんっ」
 知らぬげに素振りを始めてしまう大統領。

「あああっ」
 ニートの一人が声を上げた。
「え、演武!神聖な『娯楽室』でゲームをたしなまず一人天下一武道会!き、貴様ゲーマーの評価をヲタク以下に貶めようとする“あの人”の刺客だなっ!!かかかかか帰れぇえええ!!!!」

 言うが早いか、手元に散らばっていた色とりどりのダイスを引っつかんで投げつける【人間の屑】。ばらばらと飛び散るダイスのひとつが、大統領のこめかみにこつんとヒットした。

「……ふ、ふふふふふふ」
「だ、大統領がだんびらを担いだ!」
「戦陣組めぇ!!」
「応!!」
 挑発を繰り返して先制攻撃を誘発し、大義名分をもって敵を鏖殺する。魔法合衆国の必勝形であった。

* * *
「やはり人間、精神が弛緩したあとの恐怖には脆いものだな」
 手をハンカチで拭きながら物陰から戻ってくるピンポン。ゴミ袋の向こう側から、なにかを握り締めた腕が少しだけ覗いて見える。一瞬、その手首に力がこもると、それを最後に手の中から20面体がころがり出た。20を上に止まる赤いダイス。
「最期のダイスロールが20ならあれも満足して地獄に行くだろう」
「おーピンポン、それでどうであった」

「は、拷問の結果、【人間の屑】が語ったところによると、ニートランドの現在の支配者は“ダンジョンヲタク”マイケル6世。それと、この部屋で一番価値があるのはこの2冊、だそうです」

 キャラの!vol.1とvol.2を見下ろして無言になるランドメーカーたち。
「【情報】か」
「【情報】2つぶんです」
「うむ、さっさと売却しよう」
「きゃらの!」

★お知らせ★
~娯楽室とその住人は架空の存在であり、実在する人物団体経験とはいっさい関係ありません~

* * *
 4つめの部屋。

「木だな」
「木ですね」

 大きなうろの空いた巨大な木。うろの正面の床に、人一人が立てる程度の石版がこれ見よがしに嵌めてある。

「とりあえず立ってみよう」
 即断即決即実行。もはや大統領を何者も止めえず
☆ウィーン☆
 軽快な作動音とともにうろの中に現れたパレットで、深階からキンギョと鉄砲魚が多数搬送されてきた。
「こんなところに【エレベーター】!!」

* * *
「楽勝でしたね」
「キンギョだからな」
「鉄砲魚から【火薬】が手に入りましたー」
「【肉】もちょっぴり。キンギョ肉ですけど」
「『肉の生る木』って、これか、ひょっとして」
「……多分」
「ああ、赤身ー。Tボーン。筋・ヒレ・ロース・モモよさらば。短い夢だったなあ」

「とりあえずもうちょっと狩りましょうか」
「そだね」
☆ウィーン☆

* * *
(続く)

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