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【迷キン】絶対主義魔法合衆国興亡紀3

* * *
 合衆国人民は魔法と武器によって武装する権利を持つ。また武装する人民は、兵役の義務を負う。国軍は、国土の防衛と拡張のために、これを常設する。
   ―――絶対主義魔法合衆国憲法第9条

* * *
『ようこそ!ニートランドへ』

「なんだ、こりゃあ」
 歓迎の言葉が掲げられた、国の入り口と思しき大門は、どうどうと開け放たれ衛兵の影もない。「入場おひとり1MG」の看板もむなしく、タンブルウィードが転がっていきそうなしょんぼり風景である。

「閣下ー、【自動販売機】を発見しましたー」
「入り口に自販機とは!ますますもって場末の遊園地のごとき風体」
「だれもいないからずんどこ進んじゃいましょうか」

「……待って。大群の駆け寄る足音が」
  (「徹夜組だ!コミ★ケット!」「ホアッ!ホアッ!ホアアアアーッ!!」)

「後ろの不真面目な民を粛清してもよろしいでしょうか閣下」
「ホアッ!ホアッ!!……え、なに?」
「極自然に混ざらないでください」

 現れたのは、小鬼の群れであった。交渉を持ちかけるランドメイカー。しかし、初回初手の宮廷に交換する素材のあろうハズもなく、

「達者でなあああ」
「ニートランド防衛軍とかでなくてよかったですね」
 小鬼の群れとは平和裏に別れたのであった。

「ところで、さっきの群れに道中ではぐれた我が国の小鬼を見たように思うが」
「ありそうな話ですけど、脱走した以上民じゃないですからねえ」

* * *
 正面すぐの大広間には噴水とベンチ。掃除もされてない風情のその一角に、茣蓙を敷いてごろごろしている男の影があった。
「ニートランドの国民かね?王宮はどちらかな」
「あっち」
「ところで君は何をしているのかね」
「何も。働いたら負けかなと思っている」
「……さすがニートランド。あなた、名前は?」
「オルフェウス。“口から先に生まれた”オルフェウスだ」

 オルフェウスの腹の虫が鳴いた。

「ところで【お弁当】など恵んではくれまいか」
「うわあ、なんと欲望に忠実な。我々の食料は貴重なのでその要求は却下だ」
「うーん、じゃあ【肉】を5つ恵んでくれ。久々に肉が食いたい。それを叶えてもらえたら、あんたがたの国に行って働くよ」
「閣下、大臣殿。彼は【盗賊】のジョブを持つ【逸材】であることが分かりました。いかが取り計らいましょう」
「【肉】かー。このあと手に入るかどうか定かでないしなあ」

「ああ、それなら」
 オルフェウスがこともなげに言った。
「この先に『肉の生る木』が生えてるから、そこから取ってきてくれればいいよ」

「『肉の生る木』だと!おおお、肉!合衆国にあってしかるべき食材!赤身!筋!赤身!筋!ウェルダン!ウェルダン!」
「閣下、落ち着いて」
「ステーキ!ハンバーグ!ステーキ!ハンバーグ!」
「ピンポン殿も落ち着きなさい」
「……いやあ、案外『奇妙な果実』が生ってるんだったり」
「ニートランドだけに。『絶望した!』とか叫んだニートが身長を伸ばすために肉の生る木にぶらーんと」
 けたけた笑うヤプーと水晶ドクロ。

「とりあえず休憩など」
「……ヨミ様。お耳を拝借」
「なんだ水晶ドクロ」
「……あいつ、【ちくり屋】です」
 【ちくり屋】。ランドメーカーにあることないこと吹き込んで、互いの敵意を増幅させちゃう嫌な奴である。

「ううむ、では皆に休憩以外のことをしてもらうように頼もう」
「……お願いします」

 トラップの捜索や今後の予定の打ち合わせなどを始めるランドメイカーたちを見て、あからさまに退屈そうになるオルフェウス。
 ところが。

「違う違う、とにかく交渉をして素材の確保が第一だ!如何に閣下同様、腕に覚えのピンポン殿が相手でも、ここのところは譲れません!」
「しかしヨミ殿。われらは物見遊山に来たわけではない!とっ捕まえられるなら誰でも拷問にかけ、このニートランドの実質支配者を早急に把握すべきだ!!」
 やいのやいのと数分間。ついにピンポンが折れ、探索計画はヨミの立てたもので進められる事になった。
「ぐぐぐ、ヨミめ、ちょっと【才覚】が高いからと言って偉そうにっ」←才覚休憩表:8。ピンポンのヨミへの敵意が4上昇。

「……そうですよねー、ちょっとアレは言いすぎですよねー」
 水晶ドクロが【甘言】を弄した。
「そうだろう!水晶ドクロ殿もそう思うか!そうだよな!ちょっと偉そげすぎるよな!ええい、ヨミのばーかばーか!」←【甘言】で敵意上昇が2倍。都合8点。*

* * *
*:感情値の上限は5点なので、この処理間違い。
* * *

「……くすくす」
 どうだろう、【ちくり屋】よりよっぽどひどいことになってる気がするのであるが気のせいだろうか。いったいなぜ水晶ドクロはこのような仕業を?!
「……わたしのヨミ様と仲良くするなんて許さないんだから」
 すげえ私的な理由もあったもんである。実は、水晶ドクロはヨミと互いに【愛情】を1点持っていたのであった。げに恐るべしは女の嫉妬。

 ていうか。

 ヨミもヤプーもピンポンも水晶ドクロも女の子なんですがねえ。

「ふんっ!ふんっ!!」
 ハーレムパーティとは名ばかり、宮廷から好意の1点も向けられていない我等が大統領は、とりあえず素振り百本。その後誰も話しかけてくれないので、配下を引き連れて2つ先の部屋まで偵察に行ってきたという。
「さすが閣下!」
「すごいです閣下!」
「プレジデントマンは【探索】もお上手!!」

「……あれ?」
 ニンジャ水晶ドクロ、立場なし。

* * *
(続く)

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