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【迷キン】錯綜!超☆魔神学園!

* * *
「んんー、他のみんなはどこへいっちゃったのかなあ」
 間が開きすぎて忘れてしまいそうですが、我々の目的は只ひとつ。ここに坑道崩落で生き埋めになった炭坑夫たちの救出なのです。

「それが……」
 『死にぞこない』撃退後、陰に隠れて震えていた3人の炭坑夫。彼らが語るところによれば、崩落の後、まったく別の方角の壁が崩れ、そこに新たな迷宮が広がっていたとのこと。そして、

「その奥から響いてくる不思議な調べに、みんなふらふらと奥へ進んでいってしまっただよ」

 生徒会のお歴々は顔を見合わせました。そりゃ間違いなくこの奥に厄介な『支配者』がいるってことじゃありませんかしら。

「とりあえずその『新しい迷宮』まで案内してください」
 会計ダチュラ姉さんが生徒会長オーボエさまの意を汲んで、炭坑夫たちにそうお願いしました。

* * *
「うわあ、広い!!」

 その卵の殻が砕けたような、うすい岩の壁にできた穴をくぐると、そこには、いままでに見たこともない広い広い草の生えた部屋が広がっていました。

「これは……伝説の『草原』の一部ですね」
 副会長クリップ姉さんが言いました。
「はるか大災厄のその前、世界には向こうの壁の見えないほど広い広い部屋があり、そこは『草原』とか『森』とか『砂漠』とか呼ばれていたそうです。ここもそうした伝説の部屋の一部なのでしょう」

 『草原』……、なんだかステキな響きです。でも、わたしは、50ヤードも向こうまで壁のない部屋をみるのは初めてでしたので、これより広い部屋といわれてもまったく見当がつきませんでした。

「しかしこれではどこに何があるかわからんなあ」
「お任せください生徒会長!全員抜刀!草刈り開始!!」
 風紀委員長オレンジくんの命令で、風紀委員のみんなが一斉に腰をかがめて草をむしりとり始めました。

「あら、なんだかもったいないですね」
「だが合理的だ。学園には放牧用の家畜もいないしな」

 そうして小半時草むしりをすると、高く高く伸びた草に隠されていた、迷宮のその先にすすむ通路が見つかりました。

「よし、これだけきれいにすれば大丈夫!会長!次のご指示を!」
「よ、よし!じゃあ休憩!そのあいだに、その通路のさきの『情報収集』に出向く志願者を募るぞ!」

 会長の掛け声に、7人の生徒が手を挙げました。
  「じゃ、行ってきます!」
  「逐一報告しますよ!任せてください!」
  「『携帯電話』だってあるんですもん!大丈夫、必ず生きて帰りますよ!」

 『携帯電話』は、学園設立より伝わる不思議の道具の一つです。かつて学園の生徒は、この『携帯電話』をひとりひとつ持ち、どこでもお互いの声を聞くことができたと言うことです。今となってはこの一組が残るばかり。
 それでも、こうした偵察の際には、十二分な威力を発揮するのです。なにせ、戻らなければ伝えられない情報を、即時に後方へ送ることができるのですから。

* * *
 生徒たちがテントを張り、食事の準備をしているその間、生徒会の面々はちゃぶ台の真ん中に置いた携帯電話をにらんで、まんじりともせずにいました。

「……だいじょうぶでしょうか」
「偵察に危険は付き物ですよ、スコーン。それは志願した者達も会長もご存知のはず」

「ただ待ってても仕方ないです!食べましょう!飲みましょう!」

 わたしは手持ちの『お酒』をみんなに振舞いました。気力が奮い立つほど飲んだらべろんべろんになってしまいますが、ただ飲むよりもお酌されて飲んだ方が楽しいですし、わずかなお酒は緊張をほぐし倦怠を晴らしてくれる素晴しい薬なのです。わたしは、とくに緊張の度合いがひどいオーボエさまにちょっと多めにお勧めしてしまいました。ああん、頬の赤らむ美少年エローイ。←【お酒】で気力ゲット、【お手伝い】で気力譲渡。
 オレンジくんも、クリップ姉さんに朗らかに話しかけ、気分を和ませている様子。←【好人物】で気力贈呈。
――ああ、この生徒会は賑やかでいいですねぇ。

(注:本作品の登場人物は全員18歳以上ですおにいちゃん。重ねて、舞台は現代日本ではありませんので、現実に未成年飲酒を推奨するものではありませんおにいちゃん。)

 pirrrrr

 突然、『携帯電話』が鳴動しました。わたしは驚いて、座ったまま飛び上がってしまいました。オーボエさまがすばやく電話を取って、捜索隊にお声をかけます。

「どうだ?なにかみつかったか」
  「はいー。どうもこの部屋には罠がありそうな気配です。敵の姿はありません。
   どうしましょう、もう少し進みますか?」
「よし、もうちょっと奥まで行ってみろ!」
  「わかりました!吉報をお待ちください!1時間後にまた電話します!」
  「……おれ、この探索が終わったら結婚を申し込むんだ」
  「……出発直前に子供が生まれてな。帰ったら名前をつけてやらな」
  「……おまえ、実はイイヤツだったんだな。帰ったら仲良くしようぜ」
  「……帰って褒美を貰ったら、パン屋を開こうと」
  「……なあに、大丈夫!すぐに戻りますよ!」

「……大丈夫ですか彼ら」
「あれだけ帰ったときのことを楽しみにしている連中だ!必ず帰ってくるとも!」

 ……けれども、6時間経っても、キャンプが就眠の時間を迎えても、彼らが戻ってくることはありませんでした。←オーボエの情報収集判定、絶対失敗。派遣した配下7名全員死亡。

* * *
「……向いてないのかなあ」

 全員就寝し、見張りだけが残るキャンプで、オーボエさまは捜索隊を送った通路の奥を見つめていました。会長の持つ【星の欠片】ふたつがお姿を照らし、また辺りをも照らしています。

「オーボエさま」
「……ああ、スコーンか。……なあ、【お酒】残ってないか?なんか飲みたい気分なんだ」

「す、すみません。先ほどみなさまに振舞ってしまって」

「ああ、いや。いいんだ。酒に頼ろうとしちゃいけないってことだな」

 あああっ、すごく落ち込んでいらっしゃる!!弱ったココロの隙間に付け込むなら今なのにぃ!【お酒】をさっきの休憩で消費しちゃったわたしのばかばかマヌケ!

「あ、あのう!生徒会の備品には【担架】もあります!学園の軍事力を持ってすれば、MIAな彼らのうち何人かだって見つかるかもしれません!ですから、ですからその」

 あまりご自分を責めないでください。
「むしろオーボエさまを『攻め』てみたいのはわたしであって!」

「――スコーン、考えてることと口に出してること、逆、逆」

 そういって、オーボエさまは少しだけ笑ってくださいました。うう、修行が足りませんねスコーン。お慰めしたいオーラが見え見えで、かえって会長に気を使わせてしまいましたよ。

「でもでも!口に出したほうも本心ですから!いわゆる赤心からの、魂の叫びともいうべき!」
「もう一回言ってみ?」

「オーボエさまとイチャイチャしたーい!!」

 会長は目を丸くしたあと、ややあって吹き出しました。

「お前は自分に正直だなあ!」
「先の休憩、ホントはもう一回【デート】したかったんですけど、でもそこはガマンしましたよ?……正直に告白したので、会長!帰ったらデートするって約束していただけませんか?」
「いやいや、どうも『帰ったら○○』は危険な約束らしいや。それはちょっと保留にしようよ」

 そんな他愛無いやり取りをしながら、そのあと見張りが交代するまで、わたしは会長のおそばに控えさせていただくことができました。スコーンは幸せ者です。
 
 そう考えてから、わたしはぎょっとしました。わたし、随分と自己中心的すぎやしませんか?今日も数人、民が犠牲になっているというのに……。
 消息を絶った捜索隊の無事をあらためて祈りながら、わたしはランドメイカーの末席たる身として、学園全体の幸福とはなんだろう、会長ご自身の幸せとは?と考えてみました。
 しかし、この難問は、どうもわたしの才覚ではいかんともしがたい、深い深い迷宮であるかのようでした。

* * *

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