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【NHD】『恐竜王子』1

2007年08月20日、mixiで公開したものの再録です。基本ルール付属シナリオのため、ネタバレてますので注意。

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 金銀妖眼の覆う空が単色の世界を私ごと飲み込み――

「オラァ起きろ引き篭もり」

 悪夢は担任の先生が破ってくれた。

 祖父のくれたマンション、その一室。では今の光景は悪夢か。寝巻きのままの私を、決していやらしい目で見ない山田先生は、引きこもりの私を社会復帰させてくれた、いわば恩人であり兄のような人である。

 生活感の無いわたしの部屋。父は無く母は出て行き、優しかった祖父は悪夢に飲まれ「祖父でないもの」に成り果てた。

 TVのコマーシャルが「新世代マシン」――ゲーム機ではないものだが専用ソフトは全部ゲームと言う不自然な存在――を売り出している。祖父を飲み込んだ悪夢は本質的な矛盾を抱えたまま、祖父の新型装置を認めない世界のほうを書き換えた。

「PSの後継機のことなんか忘れてXB○X36○買えよ」

 気を使って伏字で発音してくれる先生。悪夢狩人の先達でもある彼は、高校生活6年目になる引きこもりの私のようなダメ人間にも優しくしてくれる大変な人格者でもある。

 私はME。エムイーと発音して欲しい。戸籍上の名はクタラギエミだが、狩人と悪夢は私をそう呼ぶ。電子の妖精MEと。

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「キモッ」
 テツヤはクタラギの大学ノートをテーブルに放り投げた。
「ああっ、あたしのネタノート……」
「すさまじい美化振りだ。クタタソ、よくまあここまで」
「いいじゃない妄想くらい何書いたってー!」
「痛い、痛すぎる……クタラギさん、そろそろ立ち向かわなきゃ現実に。6年も高校生やってんだから。それと、私は自分の生徒にこれ以上問題起こして欲しくないだけですからね」
「いいんだもん!成人してるからいいんだもん!おじいちゃんの財産で働かなくても生きていけるからいいんだもん!」
「20過ぎて『だもん』言うなこのピザがあああ!!」

 山田講師顧問の茶道部室は、今日の試験中に起きた事件――すなわち恐竜ぬいぐるみによる試験妨害の真実について真面目に討議されていた。山田顧問の言うところの『裏茶道部』。部員はノムラ・テツヤ、クタラギ・エミのふたりしかいない。

 彼らは20年の時を経て現れた新世紀の悪夢狩人、ナイトメアハンター・ディープルートである。山田顧問は20年暗躍してきた古参兵、ナイトメアハンター・レジェンドであり、彼ら若輩の教育係でもあった。

「この妄想日記になんの価値があるんじゃゴルァアアア!!」
「こういう夢みたんだもん!きっとナイトメアがあたしたちを狙ってるんだもん!ああっ、あたし今伝奇小説の『史上最高の超能力を秘めたヒロイン』的立ち位置?みたいな?的な?」
「……頭痛が……」

「ともかく、破壊したぬいぐるみは委員長のノートが化けていたものでしたから。ここに『復元』して持ってきたんですけども」
「シュレッダー片から復元したレシートやATM明細から生活情報をハッキング!それソーシャルハックの基本です!さっすが先生!」
「おめーと一緒にすんなっ」
「……それで話を続けますけどね。委員長、去年弟さんを亡くされてるようですね」
「うわ重っ。っていうか関係あるのかそれ」
「わかりません。ですが『恐竜のぬいぐるみが自立行動して生徒に襲い掛かる』という奇妙な事象が起きたのは確かで、これを私はナイトメアの仕業と考えます」
「先生、それはまさかナイトメアの現実改変?!」
「また知ったような台詞を……」

 窓ガラスが振動した。細かく振動していたものが、ついに臨界を越えて3人の注意を引いた。何気なく窓を見る3人。

 そこには、学校の校庭には巨大な雷竜が何頭ものし歩いていた。二重写しのように薄れたりぼやけたりしながら、しかしますます実在感を強めていく。見る間に実体化した恐竜たちは校庭へりの木や遊具を押しつぶし蹴り倒し、悠然と校舎と体育館の方へと歩み寄る。

「な……あ、やべえ、そこの!逃げろ!」
 テツヤは見た。恐竜が勢いで押しつぶしそうな渡り廊下に、怖いもの見たさで高等部の校舎までやってきていた初等部の子供たちの姿があるのを。
「!!」
 半透明の恐竜が渡り廊下を叩き壊すのと、テツヤとエミが弾かれたように駆け出していくのはほぼ同時だった。

* * *
(続く)

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