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【NHD】『恐竜王子』9(了)

2007年10月04日mixiより再録。
# # #

* * *
「きゃ~ん★なんで効かないのぉ?!」
「効いてないわけじゃありません!手数で圧しなさい!!」

 敵に回るかと思われた恐竜は、現実と同じ立ち位置……すなわち、愛されるべきぬいぐるみへと変貌し、似つかわしくない闘いの場からは姿を消した。

 だが、銀の巨人は残った。ナイトメアとして。世界に仇成す黒い鬼として。

『ヘヤァッ』

巨体に似合わぬ俊敏さで、迫り、踏みつけ、蹴り、そして光輪を放つ。

「でけぇよ!!どおやって倒すんだこんなの!!」
「思い出しなさい、ここは夢です!彼我の距離も大きさも、あくまで主観に過ぎません!」
「日本語で頼むよセンセー!!!!!」

* * *

「きらりーん☆ 磁界の帝王モード効果なし!であるならば、Mewwwwたん二段変☆身!!」

 氷色の美少女は、虹色の光を纏って、ツインテールの桃色ミニスカアイドルに衣装替えした。映像の暴力とはコレをいうのだろうか。山田もテツヤも絶句した。

「いやもう、ほんと中の人がクタラギでさえなきゃなあ……」
「……教師として言いますが、外見で人を判断してはいけませんよ……」

「でもって『ハートビーム』!!その正体は光速の電撃が大気中に残す衝撃波の雲!どう、ハート型が飛んでくみたいで可愛いっしょ?!」

「当ててから言えーー!!!!」

 ぽやぽやと飛んでいく幾本ものハート型のリングは、ぽやぽやと観覧車に激突して……観覧車を桃色に染めた。一瞬前、観覧車のその影に飛び込み、直撃を避けた銀の巨人。

『ヂュワッ』

「必ずしも当てる必要はないのです!『相手より強者である』事を示せるなら、それは精神世界での勝者であることと同意です!!」

「日本語でおkー!!」

「『コイツには敵わない』って思わせたら、その時点で勝ちだって事だよね☆センセー!そのあと夢の中では何をやっても勝てない、のは本人が認めてるんだから、目覚めるまで負け確定、回避不能☆!ガードキャンセルハメ昇竜だもんねー★!」

「そうです!つまり負けたと思わない限りナイトメアハンターが負けることはありません!ハンターが膝を折るのは、魂が敗北を認めたとき!精神にいくつの 外傷 トラウマ をかかえようとも、最後まで立ち続けた魂が最終的に勝利するのです!」

「もっと分かりやすく頼むー!」
「ダイブ中にPoDを使い切らないでくださいーー!!」
「分かったー!!」

* * *
 次の瞬間、銀の巨人の必殺光線が大地を薙ぎ払った。その射線上にいた二人は辛うじてこれをかわし……しかし宿命は、Mewwwに回避することを許可しなかった。

「か、かわしてもかわしてもビームが追ってくるよう★!」
「宿命に打ち勝ちなさい!『必ず回避できます』!!」
「わ、わかった先生!がんばるよ!」

 振り返ってガッツポーズをとったMewwwは立ち止まり、

 当然、死の光線の直撃を受けた。

「んきゃー!!★」
「あのバカ……!」

「あなたの犠牲、無駄にはしません 御庭番流、小太刀二刀 オニワバン・スタイル・ダボーコダチ !!」
『古強者』である山田は、20年前と同様、無から愛刀二振を生み出し、
「即行!“陰陽撥止”!!!」
 無造作にその一振を投擲した。

『ヘアッ』
 腰を落とした構えから、難なくこれを弾き飛ばそうとする銀の巨人は、その視界の端で、
対手が 両の手 ・・・ に無数の苦無を構えているのを見た!

『シアッ』
 弾き飛ばした飛刀の背後に、全く同一の軌道を描いてもう一振りがすでに!
 一刀めを投げるあまりにも無謀で無造作な挙動に虚を突かれ、山田の本命である『陰の小太刀』が巨人の左腕を切り飛ばした。
『ギャアアア!!』

「光の巨人の悲鳴を聞くのは初めてですね!!」
 間髪いれず、左右八本の苦無が銀の光を引いて飛ぶ。だが、巨人の腕が液状に溶け崩れ、地面から中空へと滴り登る。巨人も全身を見る間に黒く染め、その風体はさながらコールタールで練り上げた泥人形のよう。腕だったものをどろどろとした盾に変え、黒い巨人は死の八連撃をぬるりと吸収した。

「だがしかし、化けの皮は剥がれましたね。正義の味方を殴り続けるのはいささか気が引けますから」

『ォ……!!…ッ…!!!』
 巨人が再び、腕を交差させようと大きく腕を広げる。

「ふふん、すでに見たぜ、貴様の 必殺光線 わざ は……!」

『……ィ!……ァ!!』
 腕は化鳥が羽撃くようにのびあがり、頭上へと掲げられ、ハンターたちの死を宣告せんとしていた。追い詰められた巨人が光線を放つとき、敵は全て滅びる。それはナイトメア自身が巨人の姿に与えた理であった。

「『光線を撃たれたら負ける』なら……俺は光線よりも先に『撃つ』!俺は“光速の騎士”!俺より先に動くことは他の何人にも『許可しない』!!!」

 宣言と、攻撃と。どちらが早かったのか。只ひとつ確実なのは、巨人の光線技よりも、防御よりも、認識よりも、何よりも先に『結果』があった。

 巨人の胸に、大きな穴が穿たれていた。

「俺の『風』は、光より速いぜ……?!」

 悪夢の世界にひびが入り、砕け、光に解けてゆく。

「やったね☆隠れてみてたかいがあったよ!」
「うわあ、現実に戻されてたんじゃなかったんですか」
「PoDを使い切ったらダイブ能力なくしちゃうじゃない★そんな夢のないことできな~い」

「ま、ぎりぎりまで引っ張ったからな」
「でもでも~、これで今回のダイブはおしまいだよね★Mewww、かなり残念!」
「僕も残念です」
「俺もだ」

 現実で待ち構えるカバと、目の前にいる夢のような(夢だけど)美少女とを比べて、二人はつい溜息をついた。
「わあい☆Mewwwとお別れが残念なんだね!だいじょうび、Mewwwたんはいつでもキミのそばにいるよ☆なーんちゃって!」

「なあセンセ、夢の中で人を殺すとどうなるんだ」
「相手が精神体なら現実では廃人ですね。完全犯罪ですよ」
「ふうん」

「わあ★不穏な会話っ★ねねねねね、早く法治国家ニッポンに戻ろうよっ」

* * *

 ナイトメアハンターの物語は、悪夢との闘いの物語だ。後の話は、だから、蛇足にすぎない。

 タクローとユウコの母は、悪夢から解放された。死者の影を追うことなく、生きた家族と向き合うことができる優しさと強さを取り戻した。そこには、別の方法で公園の存続を模索していた夫の努力もあった。

「ありがとうね、ノムラ君。みんなが何をしてくれたのかはわからないけど、でも、また家族みんなで暮らせるようになったのは君のおかげだと思うの」

 マチナカ市には、ユウコの父の働きで、パンダが寄贈されることとなった。公園には、いま急ピッチでパンダ舎が建築されている。もちろん、公園閉鎖の話は没である。恐竜の像も、階段が塗り込められた以外は元通りであった。

「おふくろさんと仲良くな」
「うん……ありがと……」
「泣、泣くなよ」

「あれ、お取り込み中だったかな」
 ヨウが冷ややかな声を投げかけた。手には風呂敷に包まれた重箱らしきものを提げている。
「おにぎり作ってきたんだけどな」

「あれえ?」

「あ、あの、あなた誰ですか。うちの生徒じゃないですよね」
「テツヤくん、その娘だあれ?何で泣かせてるの?」

「あ、あれえ?」
* * *

「…松本ー。三浦ー。ライトニングー。……ライトニングー?さて、ノムラ君はどこですか」
「ライトニングならさっき女の子二人を撒いて逃げてきましたよ」
「やるなあライトニング」
「さすが光速の騎士」
「うんうん、すっかりその綽名も馴染みましたね」
「センセー、ところでなんでノムラがライトニングなんですかー?」

「……ああ、それは秘密です」
* * *

「ぶひー。小森霧はこんなに可愛いのにどうして私の引き篭もりは可愛くなんないかしら」
 ぶぉりぶぉりと咀嚼音を漏らしつつジャンクフードを大量に消費する豚一頭。
「やっぱ美人は得よねぇ」
 デカイ湯のみでコーラを煽る。げふう、と品のないゲップの音。カーテンの締め切られた部屋に、モニターの明かりがちらちらと瞬く。
「ニコニコは時間を忘れるわあー……そして糸色先生蝶☆萌え。命兄?いやいや久藤くん。ん…久藤くんと交くん。むしろ交x久?うはwwwktkrwwwホモが嫌いな女子なんていません!wwwと
 ……ほい、今日の自演終わり」

 やがてクタラギは伸びをひとつすると、テキストエディタを開いて、書き付けていた物語の続きを綴り始めた。勇敢な少年と古強者と電子妖精が、少女に与えられた絶望的な呪いに抗い、悪夢の迷宮を突破し、真実にたどり着く話だ。

 それは、現代に蘇った希望が悪夢を滅ぼす話。ナイトメアハンター・ディープの物語。

「事件まんまじゃ売るわけにないから、いいんちょとヨウちゃんのあたりはすげえ脚色を入れようっと。今回の画はてっちゃんに頼むわけにいかないから……うーんだれがいいかなあ……」

 外界に――他者に向けて開かれた電子の窓。悪夢に囚われていたクタラギの心が、またひとつ、他人と触れ合う勇気を取り戻した。だが彼女は『今はまだ』気づかない。それが彼女に与えられた、悪魔狩人としての最高の報酬のひとつだということには。

* * *
『恐竜王子』~了~

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