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【NHD】『恐竜王子』8

2007年09月12日mixiより再録。
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* * *
 夢。他人の夢。曖昧模糊として、前後のつながりも、時として天地さえ定かでないもの。

 しかし、レミングの夢は違う。ナイトメアの必要性に応じて、ある種の一貫性を持ち、その一貫性と言う不自然さで持ってレミングを苛む。

 夢が夢だと気がつかないほどに首尾一貫していたら、君は夢だと気がつくだろうか?それがどれだけ荒唐無稽であったとしても、映画の中の登場人物にとって、怪獣は紛れもない現実なのだ。

 母君の悪夢は、夢が丘公園を中心に形作られ、そこで、――トリケラトプスと、銀の巨人が影絵のように立っていた。

「うわあ、怪獣映画」

「分析は本業ではありませんが、――公園がご母堂の精神力、そして守りたい心の防壁。巨人の方はそれを守る立場で、怪獣は悪者、ですかねえ」
「いやむしろ、怪獣好きだったんだろ?少年。そしたら怪獣を倒す巨人は悪者じゃねえか」 

 ううん、と声がした。

 死んだ少年が、そこにいた。

 どっちも、ぼくのすきなものなんだ。おかあさん、ぼくのことだいすきだったから。

「ゆ、幽霊?」
「いいえテツヤ君、幽霊なんかいません。ここは夢です。いるのは思い出と」

 ないとめあ。そうなんだよね?

「……」

 おかあさん、ぼくのことなんどもおもいだして。すごくかなしそうだったから。何とかしてあげたかった。でも、それはおかあさんがそうねがったから、だったんだね。『やさしいたくろーなら、かなしいわたしをきっとたすけにきてくれる』って。

「……きみは……」

 うん、やっとわかったんだ。ぼくはいつまでもおかあさんのこころにいちゃいけないんだって。ありがとう。おじさんたちのおかげです。

「おじさん言うな」

 ごめんねおにいちゃん。おかあさんとおねえちゃんをおねがいします。ぼくの……ぼくのこと、やっつけてください。

 少年の姿が闇に溶ける。背後で、巨人と恐竜の影絵に色が蘇る。夢で意識を集中された存在、夢の主役として。

「あれが本体かよ!!あの大きさ、どーやって倒せばいいんだ!!」
「おちついて、テツヤ君!ここは夢の世界、願う心が力に変わる場所なんですよ!」

 と、次の瞬間。

「おまっとさんでございましたー☆」
 七色の閃光とともに、空気を読まない何かがダイブしてきた。

 ガラス細工のように鋭利で多面的な外観の、氷色のロングドレス。背中には羽根を思わせる大きなリボンがついている。手には氷の星が飛び回る長い杖。結い上げた長い髪は氷を思わせる銀のティアラにまとめられ、つややかで明るい菫色を輝かせている。
 くりくりとした大きな瞳の美少女が、アニメでしか見られないような決めポーズを取って、その場に降り立った。

「ナイトメアハンター・Mewwwたん爆誕!いぇい☆」

 うふ、と笑った顔は確かに可愛らしい。可愛らしいが、

「誰」
「誰、って。良く見ろよセンセ、クタラギだよ。本人のブログトップのイラストにそっくりだろ」

「えええええええーーーー!!!」

「ちなみに画を描いてくれたのはてっちゃんでーす。ありがとね☆」

* * *
 新世代のナイトメアハンター、ディープルートは、自らの理想を夢に具現化する。「もう少し強くなりたい」「もう少し早くなりたい」「もうすこし賢く」と。
 したがってその外見は彼ら彼女らの夢にやや近い。そして現実とはある意味正反対の存在として夢世界に顕現する、の、だ、が……

「ここまで極端なのは見たことないですよ」
「へえ、センセでもそうか。いや、これはアレがおかしいんだからしょーがねえと思うよ」

「なんか相談してる^^ねえねえ、はやくあいつやっつけようよ☆」

 美少女が杖を左手に持ち替え、細腕でガッツポーズをしてみせる。いちいち動作が芝居がかっているが、またそれが様になるから美貌と言うのは恐ろしい。

……逆だったらよかったんですかねえ。

 山田は現実のクタラギを脳裏に浮かべ、いやいやとそれをかき消すと、目の前の闘いに集中することにした。
……熟練者は私だけ、と考えて戦うべきでしょう!

* * *
(続く)

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