【D&D】The Shackled City[第3章]06
「…本来、『洪水祭』は冬の洪水に備えるためのものでした。一番の降雨量になるこの一週間、雨を見張るため、夜通し誰かが起きているための方便」
ジェンヤが祭の由来に言及する。それは、生粋のコールドロンっ子であるアランとテッドにも、初耳の話だ。
「つまり、それがだんだんお祭り中心になっちゃったってことですか」
テッドが確認するように問う。ジェンヤは肯きを返す。
「…本来、『洪水祭』は冬の洪水に備えるためのものでした。一番の降雨量になるこの一週間、雨を見張るため、夜通し誰かが起きているための方便」
ジェンヤが祭の由来に言及する。それは、生粋のコールドロンっ子であるアランとテッドにも、初耳の話だ。
「つまり、それがだんだんお祭り中心になっちゃったってことですか」
テッドが確認するように問う。ジェンヤは肯きを返す。
「よく来てくれました、さあ奥へ――なんてこと」
寺院前で待ち構えていたジェンヤが、テッドとタリスの背後のマグロ状酔漢2体を見て眉を顰める。浮遊盤に駆け寄り、身じろぎ一つしないレイウルトとアランのアルコール臭とその顔色を確認すると、即座に呪文を二度投射。
「――っ痛うー?!」
アランが意識を取り戻し、額に両手をあててのたうつ。狭い浮遊盤の上でレイウルトにぶつかると、反対側に転がって、路上に腹から落ちた。
「ナニコレ、なんで俺こんな頭いてえのー?!」
「メイヴさん、こちらへ」
小舟の縁から低く身を乗り出し、腕をこちらに伸ばすのは鮮やかに赤いビキニ姿のアビゲイルだ。同じ船に、ケンクのピーターと召喚術師グランツの姿もある。二人は、アビゲイルの乗り出しで船が傾かぬよう、逆側に身をよせているが、その手にあるのは小杖。
小山のように盛り上がった湖の主“モッコス”――の幻影は、おなじくメイヴ――の幻影をその幻の触手に絡め取り、そのエロ、いや恐ろしさを岸辺の観客たちに十二分にアピールしている。
「…幻影。これが、大当たり?」
「ええ、アカデミー幻術部とウィー・ジャス女子寮有志の共同制作なんです」
「…そっちの二人は?」
銀の髪から清廉な雫を船板に垂らしながら、メイヴは小首をかしげる。
雨が降る。コールドロンの冬は、雨季にあたる。それも、南国特有の激しい驟雨だ。その冬最初の土砂降りがくれば、今年も、
「さあ、コールドロン市長セヴェレン・ナヴァラントの名において、ここに『洪水祭』の開催を宣言する!!」
コールドロンの冬祭り、『洪水祭』が始まる。おお、と歓声が上がる常設大天幕は、センター湖のほとりに建っている。
例年になく強い雨脚が湖面を叩くのを、だが祭りが開催された今ばかりは、誰一人厭う者とていなかった。
胸元を狙ったアランの腕を、赤毛の女は軽やかにターンして回避。谷間を見せつけるように両の手を円卓につくと、
「まったく!男はみんなここを狙いやがるね」
「コーラ、君の踊るような足さばきはいつだって素敵だ」
女の傍らに座っていた、髭の男がそう褒め称えながら席を立つ。
「そして、私のパートナーに手を出すのかね、そこの君。では不肖アスラーキン二世、彼女の盾として君たちの挑戦を受けよう」
「まあ、ザッカリー」
芝居がかった男――ザッカリー・アスラーキン二世の宣言に、赤毛の女――コーラがうっとりとした視線を送る。
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