【D&D】The Shackled City[第3章]13
鍛冶場の炉に、火が入っていた。
「――おう」
鍛冶屋グーネザーンの主、テッドの父が、作業場に入ってきた二人に、ほんの一瞬目を向ける。
「…ただいま」
炉の火と赤熱した鋼とを、長年見つめ続けてきた鍛冶師の右目は、眼球全体がわずかに白い。手元の工具を丁寧に拭いつつ、父は子に問いかける。
「――死にそびれたらしいな」
テッドは返答に詰まる。死にたかった訳ではない。父の鎧は寸でのところで自分を守ってくれた。
【D&D】The Shackled City[第3章]12
物言わぬ骸となって帰還したサーセム卿の、その状態を確認するべく我らがジェンヤ侍祭が最初に手を掛けたのは――
「サーセムさま…首を刎ねられました、か…」
近しい人物の死に理性をかき乱されているであろう、とおおよその人は思うであろう。だが、ジェンヤは聖カスバードの信徒であった。
およそ人の体の一部とも思えぬほど汚された肉の玉を、ぐるりと返して切れ目から指を差し込み、その傷を検める。
「…なるほど、奴らめ、舌まで抜いたのか。なんと周到な…ここまでするか…」
あ、《死者との対話》呪文を前提に遺体を検めている、と気づいたとき、テッドの背筋にうすら寒いものが走った。高位の冒険者、その生きざまの異様さはいくらか理解したつもりであったが、こうまで徹底されると、己の理解の浅さをつくづく思い知らされる。
【D&D】The Shackled City[第3章]11
「…これ」
メイヴが、シェンセンに奇妙な首飾りを差し出す。テッドが気絶している間にタンイーターの死体から奪った、黒い三角形の聖印だ。
「やはり、エボン・トライアド」
シェンセンが眉をひそめる。
「そうか!やっぱり奴らか!」
「そうじゃないかと思ってたんだ!」
盛り上がるフェリアンとファリオ。
「エボン…何某が、小杖を奪って逃げたと」
平静を装っているのか苦虫を噛み潰した風であるのかまるで区別のつかない、渋い表情のレイウルトが先を促す。
「やばいよシェンセン、このままじゃコールドロンが水没のピンチ」
「罵伽っ」
盛り上がりのノリのままにフェリアンが口走り、シェンセンがあわてて口を塞ごうとするが。
【D&D】The Shackled City[第3章]10
暗い淵にあった意識が、光差す浅瀬へと浮かび上がる。自発的呼吸が、鉄の匂いの空気を肺腑に送りこみ、胃が裏返りそうな吐き気がこみ上げる。男の意気地が奥歯の噛み締めとともにそれを押しとどめる。反射と意地のせめぎ合いが、むせるような咳になって、口の端から零れ落ちる。
「目覚めたか」
低い、落ち着いた声。テッドは、自分の後頭部を支えてくれている大きな手の存在に、そこでようやく気が付いた。

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